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2025年02月26日
動物専門員の日常#16 これがええねん!フラミンゴ島の土起こし
先日、フラミンゴ池の中央にある陸地(通称:島)の土起こしをしました。
王子動物園のフラミンゴ飼育の歴史は長く、1977年に国内で初めてフラミンゴの人工ふ化に成功をし日本動物園水族館協会から繁殖賞を受賞しています。
さらに、1983年から昨年まで41年連続でフラミンゴの繁殖に成功をしており、今年も期待がかかります。先月から、求愛ディスプレイがますます盛り上がりをみせ、交尾をする姿や土壌をくちばしで気にする様子、縄張り争いなども確認ができました。
▼交尾の様子(一瞬の撮影だったので、ぶれています)
▼土壌をくちばしで気にする様子
フラミンゴたちからのたくさんのサインをキャッチして、
ベテラン飼育員とも相談をし「そろそろ土起こしの季節だね」ということで、島の土起こしをしました。島を耕してみると底の方の土壌は灰色~黒色となり、柔らかさや匂いも違います。 一般的に排水性が悪く、酸素が不足しがちな土壌は黒さび状態になることが知られています。 農作物を育てたことのある方なら、酸素が少なくて凝り固まった土はよくないってこと、感覚的に分かりますよね。 このような土壌だと農作物は酸欠状態に陥り、上手く育つことができません。
でも、フラミンゴたちにとってはこれが逆に理想的な状態! この土壌こそが、ぴったりだとか。
スコップを片手に、
「これがええねん!!」の言葉を聞き、底の土を表面に出すように耕しました。
他にもフラミンゴが好むちょっとしたコツやついついやってしまいがちだけど、やらない方がいいことなども
教えてもらいながら、えっちらおっちら完成です。
▼ベテラン飼育員と一緒に島を耕す様子
https://youtube.com/shorts/arX0GPu-tkU?si=UVpiUC9tLGnoAfyG▼島の土起こし後のフラミンゴの様子
毎年、4月下旬には最初の産卵が始まり、親鳥にあたためられた卵は28日前後で孵化しますので
順調なら梅雨入り前には最初のヒナが産まれます。今年もヒナの誕生が楽しみです。
▼昨年、誕生したベニイロフラミンゴのヒナ
動物専門員 あお
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2025年02月20日
発表会
すでに動物園のホームページなどでお知らせしていますが、3月9日(日)に第45回「大人のための動物園講座」を開催します。
今回の内容は、この1年間に動物園スタッフがさまざまな専門の会議に出席して発表した研究の成果について、みなさんに分かりやすく紹介しようという企画です。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、動物園には大きく4つの役割があります。
① 種の保存
地球上の野生生物を守り、次の世代に伝えていく
② 教育・環境教育
動物の生態を理解したり、生息する場所を守るために必要なことを考える
③ 調査・研究
動物の生態をよく知り、快適な生活ができるように詳しく調べる
④ レクリエーション
動物園で命の大切さや生きることの美しさを感じながら楽しく過ごす
動物園は毎日飼育している動物たちに幸せになってもらいたいと色々なことも考えていますが、これらの役割にも積極性に取り組みながら、動物園や大切な地球のよりよき未来をめざして頑張っています。
今年、王子動物園のスタッフがその成果として大事にまとめてきたものが、
①「床材導入によるアジアゾウの睡眠様行動の変化について」
②「後躯不全麻痺のアカカンガルーのケアについて」
③「三次元網状繊維構造体マットを使用したエゾヒグマの褥瘡治療の一例」
④「動物園内でのタイワンタケクマバチ(外来種)の出現と対策について」
⑤「歩行困難なガチョウに対する東洋医学を応用した徒手療法の一例について」
⑥「園内死亡野鳥における高病原性鳥インフルエンザの発生事例について」
などなどです。
難しそうな言葉が多くて面白くなさそうと思わないで下さいね。
毎月子どもたちにも楽しんでもらえるイベントをたくさん催している優秀なスタッフが、今回は大人のみなさん限定で満足させることは間違いなしなので!
是非とも参加してみて下さい!
対象が15歳以上の方になりますが、神戸市公式イベントサイト「おでかけKOBE」から今週の23日(日)まで申し込みを受け付けております。
https://www.kobe-ojizoo.jp/event/detail/?id=588
さて先月お知らせした梅のつぼみは…
咲きだしましたよ!
ぶろぐのぐ
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2025年01月14日
冬の使者
ついにこの冬はじめて、その姿をとらえることに成功しました!
それは、
「イカル」
美しい鳴き声の冬鳥です。
冬鳥の多くは秋に日本に渡ってきて冬を越し、春になるとシベリアなど北の方に渡っていきます。
代表的な冬鳥の仲間にはオオハクチョウやツグミ、当園で展示しているオジロワシなどがいます。
イカルはスズメ目アトリ科の鳥で、太くて大きな黄色いくちばしが特徴的で、全長(大きさ)は23㎝くらいあって、スズメやツバメなどよりも少し大きいです。
ムクノキやエノキの木の実を好んで食べる習性があるので、毎年冬になると当園にもやってきて器用についばんでいます。
季節はまもなく「大寒(だいかん)」。
暦の上では一年で最も寒い時期になりますが、昼間の時間は少しずつ長くなっていますね。
梅のつぼみも少しずつ膨らんでいるような…
ぶろぐのぐ
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2024年12月19日
動物専門員の日常#15 冬の求愛ディスプレイ~フラミンゴたちのダンス~
このあいだまで暑くて暑くて、獣舎へ氷を運ぶために走りまわっていたのに、いつのまにか寒くなり、ホースの蛇口をひねる度に冷たさが肌を刺すようになりました。
いよいよ、冬が来ました。
あっという間に1年が過ぎてしまう・・・と毎年、つぶやいているような気もするのですが動物たちにとっては違うようで、季節の移ろいに敏感です。
そのなかでもフラミンゴたちの求愛ディスプレイが日増しに盛り上がりをみせ、群れで舞い踊る姿がとても迫力があり美しいため、今日はそちらを紹介したいと思います。
現在、王子動物園では約200羽のフラミンゴを飼育しています。薄いピンク色の羽根が特徴的なのがヨーロッパフラミンゴで赤い羽根が特徴的なのがベニイロフラミンゴです。
11月中旬の気温が急に下がったころから、求愛ディスプレイがはじまりました。
最初はぽつぽつと数羽程度だったのが、日増しに10羽、20羽、30羽と。多いときには数えるのが難しいぐらいのフラミンゴたちが一斉に踊ります。
代表的な求愛ディスプレイは“旗振り”、“敬礼”、“行進(マーチング)”と呼ばれる3種類があり、それらが組み合わさって、オスもメスも一緒に参加し集団で踊ります。
▼旗振りと敬礼
“旗振り”はまるで旗をふるように、自分の首を左右に振る動作のことです。スピードよく、切れよく一斉に動かします。
“敬礼”とは翼を勢いよく広げる動作です。首の向きは上に向かって鳴きながら敬礼をするタイプと首を水平に向かって行うタイプがいます。
▼行進(マーチング)
“行進(マーチング)”は言葉の通り、一つの方向に向かって集団で歩く動作です。速足となり首を少しきゅっと傾けます。この動作が始まるきっかけは、あまりよく分からないのですが“旗振り”と“敬礼”がひと段落ついたときに一斉に起こることが多いです。
ちなみに私の1番のお気に入りなのは、“行進(マーチング)”の動き
首をきゅっと傾けて速足で歩く姿、ユニークで素敵ではないですか?
恋のシーズン到来はこれからが本番です!
例年1~3月にかけてその熱はピークに達し、徐々に鳴き声は甲高く力強さを増し、羽根の色合いも艶やかに燃え立つように変わっていきます。
フラミンゴの名前の由来は諸説ありますが、
ラテン語でflamma(炎)意味する説があるようです。
なるほど。
そう言われてみたら、フラミンゴが集団で舞い踊る姿はまるで炎が揺らめいているようです。
寒いなかでもじんわりと温かい気持ちになりました。
動物専門員 あお
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2024年12月18日
師走
先月の終わりくらいから寒さが本格的になり始めましたが、その頃の動物園ではお客様が写真撮影に夢中になっている姿が目立っていました。 撮影した写真を見せていただいたわけでもないので、何を撮っていたのかは定かではないのですが…
カメラの向いている方向から想像してみて「パシャリ」…
ウーン、こんな感じかな⁉
きっと短い秋を楽しんでおられたのでしょうね!
でも、季節はあっという間に12月です!
木々の落葉も盛んになってきました。
今年も残すところあと少し。
少し早いですが来年も王子動物園と動物たちをどうぞよろしくお願いいたします。
来年もこの動物園でみんなず~っと一緒に楽しく過ごせますように!
ぶろぐのぐ
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2024年11月03日
動物専門員の日常#14 動物の体重をはかる集い~想定外だったシロフクロウの大きさ~
みなさん、こんにちは。最近、何か想定外の出来事はありましたか?
SNSや生成AIが私たちの日常に溶け込んできて、実際に体験をしなくてもいろいろな情報を簡単に手に入れられるようになりましたよね。何か知りたいことがあれば、すぐに答えにたどり着けるし、物事の予測もしやすくなったと感じることもあります。
でも、飼育業務はそんなデジタルの便利さとは違うような気がします。
動物たちのことを深く理解するには実際に関わり、観察することが欠かせません。
私は最近、想定外だと感じることがたくさんありました。
今回は、王子動物園で開催される“動物の体重をはかる集い”にちなみ、
その内の1つであるシロフクロウのヒナの大きさを紹介したいと思います。
屋外展示場にて、シロフクロウのオスを1羽、メスを2羽飼育しています。
今年の6月にメスの1羽が6つの卵を産卵し、6月下旬にはそのうち5羽が孵化し、現在は4羽が成長しています。
▼7月初旬
▼9月下旬
シロフクロウファミリーの子育てや屋外展示場における暑さ対策、今後のヒナについてはボリュームたっぷりな内容になってしまうのでどこかの機会でまた紹介をしますね。
さて、私にとって想定外の出来事。
それは“シロフクロウのヒナの大きさ”です。シロフクロウを含むフクロウ類は同じ巣で産まれた兄弟でも体の大きさに著しい差が見られることが知られています。ある時期に数日おきに卵を産むのですが、フクロウ類の母親は最初の卵を産むとすぐに温め始めるため、その一時期に産んだ卵のうち、最初の卵と最後の卵とでは、孵化する時期がかなり異なります。これは“非同時孵化(ひどうじふか)”と呼ばれ、確実に子孫を残すための戦略だと考えられています。
今回、誕生したヒナたちも体の大きさが全く、異なりました。
1号(最初に孵化した個体)と5号(最後に孵化した個体)の大きさの差は
パッと見、約4倍もあります!!(/・ω・)/
まさに、想定外!
餌が少なくなったときに初めに産まれたヒナが後から産まれたヒナを食べてしまうこと(いわゆる兄弟殺し)があるとも言われており、実際に体の大きなヒナが小さなヒナの上に乗りあげたり、突いたりしていた時期もありました。野生のシロフクロウの生き残りの厳しさを垣間見たような気がしました。
▼7月初旬の様子
また、この時のヒナの成長スピードは、めちゃくちゃ速かったです。
休み明けにシロフクロウ舎でヒナを確認をするたびに、来る日も来る日も驚いていました。
ほんと、想定外!
それもそのはず、一生の間で最も攻撃に弱いこの時期をヒナたちは短時間のうちに通り過ぎないといけません。ただただ食べて、眠り、大きくなることを繰り返していました。
▼腹ばいになって寝るヒナ
▼ふわふわの綿羽で覆われたヒナ
さて、11月現在、綿羽は生え変わり成鳥のシロフクロウと同程度の大きさにまで成長しています。
最近、取り組みを強化しているのはハズバンダリートレーニングを利用した体重測定です。捕まえて体重を無理やり図ることもできるのですが、できるだけ負担をかけずに行うために、ヒナたちに協力してもらいながら体重を測定しています。
▼体重測定の様子
一見、簡単に乗っているように見えるのですが、シロフクロウにとって体重計は未知の物体です。恐怖心を植え付けないように少しずつじっくりと時間をかけて慣らしていくことが大切です。ただただひたすら、辛抱強く待ちます。
ヒナ全羽への体重測定のためのハズバンダリートレーニングは、
実はまだ、未完成の状態です。
すぐに体重を測れるヒナもいたら、体重計を警戒し全く近づいてもきてくれないヒナもいます。個性はそれぞれだな~と感じながら、取り組んでいます。
なので、体重測定をしている様子を見かけたらそっと見守ってくれると嬉しいです。
(※ヒナの個体識別のために、羽根の一部に食紅を付けています。)
動物専門員 あお
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2024年10月16日
気分は新人飼育員⁈
この6月からジャイアントパンダからゾウと円形猛獣舎に担当が変わる事になりました。担当動物が変われば当然ですが、今までの作業内容も変わる訳で、16年間ジャイアントパンダの担当をしていたので他の動物なんて久々すぎて忘れていましたが、20年以上飼育をしてきても、新しい担当になれば新人さんと同じでまた一から覚えていかないといけないんだなと改めて思わされました。
覚えなければいけないと言うのは、作業であったり、新しい担当動物の餌や生態などであったり、担当動物、相方さんや班の人とのコミュニケーションであったり色々な事をまた一からスタートすると言う事なんですが、大変な反面、新たに担当動物が変わると言うのもまた楽しいものです。
最初は新しい環境や作業についていくのがやっとでしたが、最近は少し落ち着きやっと担当動物達をゆっくり見る余裕が出てきたなと思っています。
その中で最近はゾウの馴致(ハズバンダリトレーニング)のお手伝いを少しずつさせてもらっていますが、やっぱり動物との信頼関係を作っていかないと難しいものだなとこちらも改めて感じています。
ジャイアントパンダの「タンタン」とは16年一緒に過ごしてきたので、同じ馴致でもかなり言う事を聞いてくれていたのですが、まだたかだか4か月程度の関係では当然タンタンほどの信頼関係など築ける訳もなく、僕が指示を出しても中々聞いてくれないのが今の現状です。
まぁ、これは他の先輩達と比べれば当然の事なのでまた新しい担当動物達ともこれからゆっくり時間をかけて信頼関係を築いていければと思っています。
当園ではゾウの馴致を11:30、14:30と行っています。
(*動物の状態によって変更する事もあります。)
と言う事なのでもし当園に遊びに来られた時に、僕が馴致を行っているのを見かける事があって、ゾウが中々言う事を聞いていなくても温かい目で見守って頂けるとありがたいです(笑)
うめもと りょうじ
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2024年10月09日
50-50
毎日ニュースなどのメディアでにぎわせているメジャーリーガーの「大谷翔平」さん。
本塁打と盗塁の同時記録で史上初の「50-50(フィフティ、フィフティ)」を達成しても、さらに記録を更新し続けて私たちにたくさんの元気を与えてくれています。
そこで今回、
「大谷翔平」さんにあやかって動物園の動物たちにも「50」という数字に関係するものはないかと考えてみました。
年齢で「50」才、動物たちではかなりの高齢で…
じゃあ身長や体重は⁉
赤ちゃんが生まれるまでの妊娠期間や、鳥などの卵が孵化するまでの抱卵期間は⁉
う~ん、などと頭をひねっていると…
あっ!ありました!
びろ~んと長いキリンの舌
なんと50㎝もありました!
さらに、野生のキリンが自然の中で走るスピードは時速でなんと50km/hになるとのこと!
すごい!キリン「50-50」を達成です!
…などとバカげた話しですみません。
でも、動物たちの素晴らしい能力や、特徴のある体のしくみなどを調べてみたり、色々と考えてみたりすると案外おもしろくて、楽しいものですよ。
みなさんにもぜひおすすめします。
普段と違った見方でさらに動物たちへの興味が増してくれるとすごくうれしいです!
ぶろぐのぐ
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2024年10月08日
ふれあい広場のカピバラ3兄弟のお話
みなさん、こんにちは。
ふれあい広場で生活する動物達の飼育担当者です。
最近、来園者の皆様からパピコについて「心配」だというお声をたくさんいただきます。
今回はパピコを含め、多くの方に愛され、応援してもらったモナカとソウについても少しお話したいと思っています。
本当は、Xに掲載しようと思っていたのですが、どうしても140字にまとめられず
ブログに、想いを書くことにしました。
長くなりますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
ふれあい広場には、強くてリーダー的存在のソウ(オス)・寂しがり屋で甘えん坊のモナカ(オス)・おっとりした性格でマイペースなパピコ(メス)の三つ子のカピバラが生活していました。
この3頭は2018年に生まれ、母親が産後すぐに亡くなってしまったので、人工哺育で育ち、様々な試練も3頭で乗り越えてきました。
(幼少期の3頭)
(2023年の3頭 左:パピコ 中:ソウ 右:モナカ)
夕方の収容時間に1頭が散歩に出かける素振りを見せると他の2頭も揃ってぞろぞろと付いていき、3頭でお散歩に行ったり、誰か1頭が体調を崩したときには、不安にならないように3頭一緒にバックヤードで大事を取ったり…
生まれてから片時も離れることなくどんな時も3頭一緒に挑戦し過ごしてきました。
モナカが、パピコにちょっかいをかけるとソウがモナカを止めたり、寂しがり屋のモナカが呼び鳴きをすると離れて歩くパピコが止まって待っていてあげたりと、リーダーのソウを先頭に3頭は仲良く過ごしていました。
(左:ソウ 右:モナカ)
(3頭で散歩している風景)
昨年(2023年)の2月12日にソウのソケイ部(内股部)にできた内科的処置が困難な重度の膿瘍を摘出するため長時間の手術を行いました。
とても重度で困難な手術でしたが、無事ふれあい広場に帰ってきてくれました。
耳に留置針を固定し、夜間も点滴を流しながら獣医師と担当者が見守りました。
ソウが口をモグモグしはじめたので、ソウが好きな物をペースト状にし、シリンジで口元にもっていくとしっかりと食べてくれました。
回復に向かっていましたが、14日に急性膵炎により、ソウ(♂4歳)が亡くなりました。
※ソウに関する詳しい内容は王子動物園のスタッフブログに記載しています
(お昼寝中のソウ)
いつも、先頭を歩いてくれる「ソウ」というリーダーを失い、2頭にまとまりがなくなりました。いつもの道なのにバラバラな方向へ向かったり、食欲が低下したりと、リーダー的存在のソウとの急な別れに、2頭は戸惑っているように見えました。
(先頭:ソウ 左:パピコ 右:モナカ)
(収容待ちの3頭)
ソウとの別れの後、モナカ(♂)がパピコを引っ張っていくのかと思っていましたが、寂しがり屋で甘えん坊のモナカには務まらず・・・いつも、パピコの姿が見えなくなると呼び鳴きをし、探し回っていました。パピコ(♀)は相変わらずマイペースで、モナカの呼び鳴きには聞く耳も持たずでしたが、それでもなんだかんだ2頭で一緒に支え合いながら過ごしてきました。
ソウのいない生活に少しずつ慣れ、これもまた、2頭らしく良い関係性だと見守っていました。
(園内で取れた柿をほおばる 左:パピコ 右:モナカ)
(ふれあい広場で収穫したニンジンをほおばる 右:モナカ 左:パピコ)
2024年8月10日
元気はあるものの、日によってエサの残しが少し目立つようになり、連日続く猛暑の影響かと考えました。主食の牧草、青草や笹などに加えて、野菜、果物、ペレットなど普段よりもバリエーションを増やしながら食欲増加を狙いました。
また、体に異常がないか調べるために、採血を行い血液を院内検査の他に、さらに詳しく調べる外部検査機関に提出し、結果を待つことにしました。
8月24日
この日の朝も、池につかっているモナカにあいさつを交わし
置き餌は食べないのに、甘えて手からだと食べてくれるモナカに、好物のリンゴとブドウを与え、「キャベツも食べる?」と声を掛けながらキャベツを与えるとそれも食べてくれて、健康チェックのため身体を触り、健康チェックに協力してくれたお礼にモナカの好きなお尻周りをモサモサ触って…そんな何気ない朝でした。
(モナカの身体にできものができていないか、傷がないか等チェックしている様子)※過去の写真です
お昼ごろから、モナカの様子がいつもと何か違うと感じ、すぐに獣医師に来てもらい、点滴をしながら様子を見ることになりました。
警戒心の強いモナカは普段バックヤードに入ってくる事のない獣医師が入ってくると、パピコも近くにいてくれましたがやはりいつもと違う光景に不安がっていました。
どうにか落ち着いてもらおうと担当者が思い付いたのが、モナカは子供の頃から口で何かを吸うと安心するようで、よくパピコやソウの毛をチュウチュウと吸っていたことを思い出しました。モナカの口元にタオルをもっていくと、口でチュウチュウとタオルを吸い、落ち着いてくれました。
一緒にいるパピコにも落ち着いて過ごしてもらえるように、担当者はパピコにもモナカにも声をかけ、身体を擦りそばにいました。
スタッフの足の間に座るパピコ
しかし、モナカとの別れは突然やってきました。
2024年8月24日モナカが亡くなりました。急性リンパ性白血病でした。
(昼寝をするモナカ)
この仕事をしていると、担当動物との別れは何度も経験しますが慣れることはありません。
普段、呼び鳴きをするのはモナカで、その呼び鳴きにも答えずマイペースに我が道を歩むのがパピコだったのですが、ほとんど聞いたことのない呼び鳴きをパピコがするようになりました。
担当者の姿や、声が聞こえると柵越しに後を追ったり、姿が見えなくなると落ち着きなく動きながら呼び鳴きをしたり、モナカを失ったパピコには覇気がなく、いつもの何事にも動じないマイペースなパピコらしさが、ありませんでした。
そして、食べ物も自らはあまり食べないので、手から少しずつ食べさせました。
手から給餌すると、しっかりと食べてくれました。
パピコと過ごす時間をなるべく作り、パピコの心と体のケアをしっかりするように努めました。
(展示場で爆睡するパピコ)
しばらくの間、健康管理のために展示を中止していましたが、パピコの状態を見ながら、少しずつ1頭で外で過ごす練習をして、パピコが自ら展示場に入りエサを食べてくれて落ち着いた時間を過ごすようになってきたところで展示を再開しました。最初のころは、1頭で過ごすという事に戸惑っていましたが現在は少しずつではありますが、慣れてきたかと思います。
ですが今まで、3頭という小さな群れでコミュニケーションを取りながら生活してきた分、急に群れでのコミュニケーションがなくなり、パピコ自身戸惑いを感じているのかと思う事が担当者としてあります。
1頭で過ごすという環境に完全に慣れるまでは、コミュニケーションの一環として、担当者が体を触る・撫でる・そばにいる、というスキンシップ(健康管理もかねて)を、とっているところをご覧になる場合があるかもしれませんが、決して可愛いからと言う理由ではなく、今の環境に少しでも早く慣れてもらえるようにパピコのペースに合わせて心のケアを行っているからです。
これからも担当者としてパピコの心と体の健康維持に努めたいと考えています。
残されたパピコを思い、ご心配の声をたくさんいただきますが、パピコなりのペースで過ごしてくれています。
パピコは、3頭の中でも特にハズバンダリートレーニングに協力してくれていて、体温測定や採血、エコー撮影、レントゲン撮影など頑張ってできるようになりました。
引き続き、日々の健康チェックはもちろん、定期的な検査もしっかりと行っていきます。
今後ともぜひパピコに会いに来て下さいね!
(4頭揃っての最後の3ショット写真。左:ソウ 中心:パピコ 左:モナカ)
最後に、パピコとモナカとソウの生い立ちを動画にしてみたので、ご覧ください★
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2024年10月03日
王子動物園リニューアル、始動!
8月16日に、王子動物園リニューアルの一環で「アフリカサバンナゾーン」及び「爬虫類館」の概要を発表しました。9月号の広報誌こうべには、王子公園ミニニュースとして掲載され、多くの方にご覧いただいたと思います。
王子動物園ではこれまで、同じ種類に属する動物を比較できる展示が中心で、一般的な展示方法なのですが、昨今、動物園や水族館では動物の自然な行動や生態を観察できる様々な展示方法の導入が進められています。言い方を変えると、動物が生き生きと過ごすことができる環境を創出することに重きを置くのが重要な視点になっています。いわゆる「動物ファースト」の概念です。
王子動物園は開園から73年が経過し、開園時から使用されているものをはじめ、老朽化した獣舎等の更新が必要であることに加え、このような動物を取り巻く情勢などにも対応していくため、これまでに市民やファンのみなさまから様々なご意見をいただきながら、「王子動物園リニューアル基本構想」と「王子公園再整備基本計画」を順次策定し、リニューアルに向けた準備を進めてきました。
その特色の一つが、新しい展示方法の導入です。今回整備する「アフリカサバンナゾーン」「爬虫類館」を含め、動物が生息する地域や気候風土との関連性などにより動物園内に9つのゾーンを設定し、それぞれのゾーンを巡りながら各地域に生息する動物を観覧しているように感じられる、ストーリー性のある観覧ルートの仕掛けとともに、各ゾーンごとに樹木などを活用して動物の生息環境をできる限り再現し、動物の自然な行動や暮らしぶりをあたかも現地で間近で見ているかのような展示にしていきたいと考えています。
その第1弾となる「アフリカサバンナゾーン」については、主に現在の北園で展示しているキリンやシマウマ、カバなど、アフリカのサバンナに生息する動物を新たに展示するゾーンとして整備します。ここでは、生息地域に近い環境で暮らす複数の動物を見通せる「通景」という手法で、臨場感のある演出を行うとともに、おすすめの観覧スポットを整備します。また、「爬虫類館」は、現在の「太陽の動物舎」の後を受けて、世界の爬虫類を生息地域別に展示し、様々な爬虫類が生息する多様な環境を再現する施設とします。
また、動物福祉の向上も重要なテーマです。新設するそれぞれの獣舎や展示場については、動物本来の能力や行動を引き出すしかけや、トレーニングに取り組みやすい設備の充実など飼育環境の向上、そして何よりも動物が快適に過ごせる環境整備を目指していきます。
このような方針の下、飼育員や獣医師をはじめ動物園のスタッフが日夜知恵をしぼり、関係者とともに設計作業をがんばっているところです。
新しい「アフリカサバンナゾーン」、「爬虫類館」は2027年夏頃にオープン予定です。
ここから生まれ変わっていく王子動物園に、ぜひご期待ください!
(サバンナゾーン・爬虫類館 基本設計の概要)
https://www.kobe-ojizoo.jp/img/renewal/savanna.pdf
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