2012年05月30日
日本初のキエリボウシインコの人工ふ化・育雛で繁殖賞を受賞
神戸市立王子動物園は、昨年3月にインコの一種「キエリボウシインコ」の繁殖に、日本で初めて成功しました。そのヒナが6か月間以上生存したことにより、(公社)日本動物園水族館協会より平成24年度の繁殖賞を受賞しました。
現在、そのヒナは1歳2か月まで成長し、園内のインコ舎で展示に向けての訓練中です。
「繁殖賞」とは、(公社)日本動物園水族館協会に加盟している動物園や水族館で飼育している動物の繁殖に国内で初めて成功した場合に表彰される賞です。
今回のキエリボウシインコは平成23年2月17日に産まれた卵を、ふ卵器で温めたところ3月24日にふ化しました。そのヒナは人間が育てる人工育雛(いくすう)で元気に成長しました。飼育係や獣医師などのものまねをするのが得意で、動物園スタッフの人気者になっています。
なお繁殖賞は、その親が生み育てる「自然繁殖」、飼育係や獣医師など人間がふ化や子育てをする「人工繁殖」、さらに「人工授精」があります。今回は人工繁殖での受賞でしたが、キエリボウシインコの繁殖は「自然」、「人工」ともに成功したことはなく、この種の国内初の繁殖例となりました。
なお、王子動物園では、過去にアムールトラやグレビーシマウマなどで繁殖賞を受賞しており、今回が20回目の受賞となりました。
今回の繁殖の経緯
2011年(平成23年)2月17日
キエリボウシインコのメス(親鳥)が体調不良で、園内の動物病院に入院
2011年(平成23年)2月20日
入院中に親鳥が卵をひとつ産卵。ふ卵器に入れ、人工ふ化を試みる。
2011年(平成23年)3月24日
ふ化。人工育雛(いくすう)を開始。ふ化日数32日
2011年(平成23年)5月3日
1日7回3時間おきに給餌を続け、ふ化後40日で開眼
2011年(平成23年)6月10日
ふ化後78日で、ほとんどの羽が生え揃う
2011年(平成23年)9月24日
ふ化後6か月生存
2012年(平成24年)5月24日
(公社)日本動物園水族館協会より繁殖賞を受賞
現在は、展示場での飼育に向け、訓練中
今回生まれたヒナについて
・名前:インコちゃん
・体長:約30cm、体高:約25cm
・体重:約360g
〔参考:成鳥の場合〕
体長:約40cm、体重:約480~550g
キエリボウシインコとは
分類
オウム目インコ科
英名
Yellow-naped Amazon
学名
Amazona auropalliata aurpalliata
分布
主に南アメリカ(メキシコ、ニカラグア、コスタリカ)
特徴
全体的に綺麗な緑色をしており、後頭部に「キエリボウシ」(黄襟帽子)の由来となっている黄色い部分があ る。
ものまねはインコの中で一番上手。
観賞用や羽を採るために密猟され、野生のものは数が減少しており、ワシントン条約附属書1に記載される 絶滅危惧種。
王子動物園のキエリボウシインコ
オス:1羽、メス:1羽、性別不明:1羽
※性別不明は今回の繁殖個体
国内の動物園におけるキエリボウシインコの飼育状況
日本国内では、15か所の動物園で計23羽(オスが9羽、メスが4羽、性別不明が10羽)のキエリボウシインコが飼育されています。
※2011年12月31日現在、今回の繁殖個体を含む
王子動物園の繁殖賞受賞歴
・マレーオオコウモリ(1957年・自然)
・クロサイ(1965年・自然)
・ルリコンゴウインコ(1969年・自然)
・チンパンジー(1970年・人工)
・オウサマペンギン(1970年・人工)
・アムールトラ(1978年・人工)
・グレビーシマウマ(1978年・自然)
・アムールトラ(1979年・自然)
・ヨーロッパフラミンゴ(1981年・人工)
・オセロット(1982年・人工)
・ロウバシガン(1982年・自然)
・カラカル(1983年・自然)
・シロカケイ(1983年・人工)
・フクロテナガザル(1984年・人工)
・ヒワコンゴウインコ(1984年・自然)
・ヒクイドリ(1985年・自然)
・ホンドタヌキ(1986年・人工)
・キンシコウ(1994年・自然)
・インドホシガメ(1999年・人工)
・アジアゾウ(2005年・人工)
繁殖賞とは
年に一度、(公社)日本動物園水族館協会に加盟する動物園・水族館が飼育している生物の日本で初めての繁殖に成功し、6か月以上生存した場合にその園館に対して授与されます。
国内初の繁殖例を評価し、情報公開することで、加盟園館全体の繁殖技術の向上とその蓄積が、希少動物の種の保存に寄与することを目的に1957年(昭和32年)に制定されました。
公益社団法人 日本動物園水族館協会とは
日本における動物園・水族館等の協力により、動物園・水族館事業の発展振興を通じて、文化の発展と科学技術の振興に寄与することを目的に日本の動物園と水族館で構成されている公益法人。
1939年(昭和14年)に19園館で発足し、現在の加盟園館は動物園86、水族館66の計152園館。総裁は秋篠宮文仁親王殿下。
英語表記は「Japanese Associaition of Zoos and Aquariums」