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2024年10月08日
ふれあい広場のカピバラ3兄弟のお話
みなさん、こんにちは。
ふれあい広場で生活する動物達の飼育担当者です。
最近、来園者の皆様からパピコについて「心配」だというお声をたくさんいただきます。
今回はパピコを含め、多くの方に愛され、応援してもらったモナカとソウについても少しお話したいと思っています。
本当は、Xに掲載しようと思っていたのですが、どうしても140字にまとめられず
ブログに、想いを書くことにしました。
長くなりますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
ふれあい広場には、強くてリーダー的存在のソウ(オス)・寂しがり屋で甘えん坊のモナカ(オス)・おっとりした性格でマイペースなパピコ(メス)の三つ子のカピバラが生活していました。
この3頭は2018年に生まれ、母親が産後すぐに亡くなってしまったので、人工哺育で育ち、様々な試練も3頭で乗り越えてきました。
(幼少期の3頭)
(2023年の3頭 左:パピコ 中:ソウ 右:モナカ)
夕方の収容時間に1頭が散歩に出かける素振りを見せると他の2頭も揃ってぞろぞろと付いていき、3頭でお散歩に行ったり、誰か1頭が体調を崩したときには、不安にならないように3頭一緒にバックヤードで大事を取ったり…
生まれてから片時も離れることなくどんな時も3頭一緒に挑戦し過ごしてきました。
モナカが、パピコにちょっかいをかけるとソウがモナカを止めたり、寂しがり屋のモナカが呼び鳴きをすると離れて歩くパピコが止まって待っていてあげたりと、リーダーのソウを先頭に3頭は仲良く過ごしていました。
(左:ソウ 右:モナカ)
(3頭で散歩している風景)
昨年(2023年)の2月12日にソウのソケイ部(内股部)にできた内科的処置が困難な重度の膿瘍を摘出するため長時間の手術を行いました。
とても重度で困難な手術でしたが、無事ふれあい広場に帰ってきてくれました。
耳に留置針を固定し、夜間も点滴を流しながら獣医師と担当者が見守りました。
ソウが口をモグモグしはじめたので、ソウが好きな物をペースト状にし、シリンジで口元にもっていくとしっかりと食べてくれました。
回復に向かっていましたが、14日に急性膵炎により、ソウ(♂4歳)が亡くなりました。
※ソウに関する詳しい内容は王子動物園のスタッフブログに記載しています
(お昼寝中のソウ)
いつも、先頭を歩いてくれる「ソウ」というリーダーを失い、2頭にまとまりがなくなりました。いつもの道なのにバラバラな方向へ向かったり、食欲が低下したりと、リーダー的存在のソウとの急な別れに、2頭は戸惑っているように見えました。
(先頭:ソウ 左:パピコ 右:モナカ)
(収容待ちの3頭)
ソウとの別れの後、モナカ(♂)がパピコを引っ張っていくのかと思っていましたが、寂しがり屋で甘えん坊のモナカには務まらず・・・いつも、パピコの姿が見えなくなると呼び鳴きをし、探し回っていました。パピコ(♀)は相変わらずマイペースで、モナカの呼び鳴きには聞く耳も持たずでしたが、それでもなんだかんだ2頭で一緒に支え合いながら過ごしてきました。
ソウのいない生活に少しずつ慣れ、これもまた、2頭らしく良い関係性だと見守っていました。
(園内で取れた柿をほおばる 左:パピコ 右:モナカ)
(ふれあい広場で収穫したニンジンをほおばる 右:モナカ 左:パピコ)
2024年8月10日
元気はあるものの、日によってエサの残しが少し目立つようになり、連日続く猛暑の影響かと考えました。主食の牧草、青草や笹などに加えて、野菜、果物、ペレットなど普段よりもバリエーションを増やしながら食欲増加を狙いました。
また、体に異常がないか調べるために、採血を行い血液を院内検査の他に、さらに詳しく調べる外部検査機関に提出し、結果を待つことにしました。
8月24日
この日の朝も、池につかっているモナカにあいさつを交わし
置き餌は食べないのに、甘えて手からだと食べてくれるモナカに、好物のリンゴとブドウを与え、「キャベツも食べる?」と声を掛けながらキャベツを与えるとそれも食べてくれて、健康チェックのため身体を触り、健康チェックに協力してくれたお礼にモナカの好きなお尻周りをモサモサ触って…そんな何気ない朝でした。
(モナカの身体にできものができていないか、傷がないか等チェックしている様子)※過去の写真です
お昼ごろから、モナカの様子がいつもと何か違うと感じ、すぐに獣医師に来てもらい、点滴をしながら様子を見ることになりました。
警戒心の強いモナカは普段バックヤードに入ってくる事のない獣医師が入ってくると、パピコも近くにいてくれましたがやはりいつもと違う光景に不安がっていました。
どうにか落ち着いてもらおうと担当者が思い付いたのが、モナカは子供の頃から口で何かを吸うと安心するようで、よくパピコやソウの毛をチュウチュウと吸っていたことを思い出しました。モナカの口元にタオルをもっていくと、口でチュウチュウとタオルを吸い、落ち着いてくれました。
一緒にいるパピコにも落ち着いて過ごしてもらえるように、担当者はパピコにもモナカにも声をかけ、身体を擦りそばにいました。
スタッフの足の間に座るパピコ
しかし、モナカとの別れは突然やってきました。
2024年8月24日モナカが亡くなりました。急性リンパ性白血病でした。
(昼寝をするモナカ)
この仕事をしていると、担当動物との別れは何度も経験しますが慣れることはありません。
普段、呼び鳴きをするのはモナカで、その呼び鳴きにも答えずマイペースに我が道を歩むのがパピコだったのですが、ほとんど聞いたことのない呼び鳴きをパピコがするようになりました。
担当者の姿や、声が聞こえると柵越しに後を追ったり、姿が見えなくなると落ち着きなく動きながら呼び鳴きをしたり、モナカを失ったパピコには覇気がなく、いつもの何事にも動じないマイペースなパピコらしさが、ありませんでした。
そして、食べ物も自らはあまり食べないので、手から少しずつ食べさせました。
手から給餌すると、しっかりと食べてくれました。
パピコと過ごす時間をなるべく作り、パピコの心と体のケアをしっかりするように努めました。
(展示場で爆睡するパピコ)
しばらくの間、健康管理のために展示を中止していましたが、パピコの状態を見ながら、少しずつ1頭で外で過ごす練習をして、パピコが自ら展示場に入りエサを食べてくれて落ち着いた時間を過ごすようになってきたところで展示を再開しました。最初のころは、1頭で過ごすという事に戸惑っていましたが現在は少しずつではありますが、慣れてきたかと思います。
ですが今まで、3頭という小さな群れでコミュニケーションを取りながら生活してきた分、急に群れでのコミュニケーションがなくなり、パピコ自身戸惑いを感じているのかと思う事が担当者としてあります。
1頭で過ごすという環境に完全に慣れるまでは、コミュニケーションの一環として、担当者が体を触る・撫でる・そばにいる、というスキンシップ(健康管理もかねて)を、とっているところをご覧になる場合があるかもしれませんが、決して可愛いからと言う理由ではなく、今の環境に少しでも早く慣れてもらえるようにパピコのペースに合わせて心のケアを行っているからです。
これからも担当者としてパピコの心と体の健康維持に努めたいと考えています。
残されたパピコを思い、ご心配の声をたくさんいただきますが、パピコなりのペースで過ごしてくれています。
パピコは、3頭の中でも特にハズバンダリートレーニングに協力してくれていて、体温測定や採血、エコー撮影、レントゲン撮影など頑張ってできるようになりました。
引き続き、日々の健康チェックはもちろん、定期的な検査もしっかりと行っていきます。
今後ともぜひパピコに会いに来て下さいね!
(4頭揃っての最後の3ショット写真。左:ソウ 中心:パピコ 左:モナカ)
最後に、パピコとモナカとソウの生い立ちを動画にしてみたので、ご覧ください★
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