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最新ニュース

  • 2024年03月07日

    エゾヒグマ「ロクジ」の治療

    クマ科の動物は、高齢になると、下半身の麻痺などがおこることが多いです。

    エゾヒグマ「ロクジ」(32歳)も、後肢のふらつきが現れたため、以前ウマグマ「ボー」が療養した時にバリアフリー仕様にしていた北クマ舎に、2022年に移動し、療養中です。

     

    下半身を動かせないので、おしりや腰の骨が出っ張っている部分に、褥瘡(じょくそう(床ずれのこと))ができます。
    小型や中型の動物ならクッションなどに寝かせますが、大型の猛獣ではなかなか難しいです。
    少しでも緩衝材になるよう、寝室の床には牛用のゴムマットを敷き、そのうえにワラを敷いて、飼育員と獣医が毎日治療に取り組んできましたが、褥瘡は悪化する一方でした。

     

    そんな時に、全国の動物園が集まる研究会に参加し、ある動物園の発表を拝見しました。
    様々な繊維を中心に扱う企業の東洋紡エムシー株式会社と連携し、人やペットの褥瘡のケアにも活用されているマットレスを用いて、カンガルーやヒツジの褥瘡の予防に成功したというものです。
    従来のマットレスより体圧分散や通気性に優れているとのことでした。

     

    動物園に戻り、飼育員や獣医たちと相談しました。
    中型の動物で成功したとはいえ、クマに使えるのだろうか、壊されてしまうのでは、などの懸念もありましたが、とにかくやってみようということで、その動物園に連絡し、東洋紡エムシー株式会社を紹介していただきました。

     

    同社に連絡すると、クマでの効能を調査する目的で、まずはサンプルとしてマットレスをご提供いただき、硬さや厚みなどについて丁寧に相談にのっていただきました。

     

    ロクジの寝室の床に敷いてみると、ロクジはマットレスの上におとなしく座っており、どうやら気に入ってくれたようでしたが、人用の布製ベッドカバーは一瞬で引き裂かれました。
    水を通しながらもクマに破られにくい強い素材のカバーを探し出すなど試行錯誤しながら、毎日、傷口の処置をし、治療を続けました。

     

    同社のご担当者様にもご来園いただきロクジの様子を直接見てもらったうえで、意見交換をしながら治療を続け、一時は骨が見えるほどに悪化していた褥瘡の傷が、数ヶ月後、ほとんどふさがってきています。このため、先日から観覧を再開し、屋外でゆっくり過ごすロクジの姿を久しぶりにご覧いただいています。

     

    ただ、当初はおとなしく座っていたロクジが、マットレスやカバーを爪で破るようになってきています。
    元気になってきた証拠やね、と苦笑しながら、飼育員たちが毎日補修に追われています。

     

    マットの有用性も確認できたので、今後はこのマットを継続的に購入・使用していく予定です。

    マットレスのサンプル提供とご相談にのっていただいた東洋紡エムシー株式会社様と、貴重な症例をご報告いただいた動物園様に、心より感謝申し上げます。

     

    これからもロクジができるだけ快適に過ごし、長生きできるよう、努めていきます!

     

     

    DSC_0852

     

      

    DSC_0864

    マットレスの上でくつろぐロクジ

     

     

    ション