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2023年11月18日
高病原性鳥インフルエンザについて
(今回はちょっと難しく、楽しくもない内容ですが、最後まで読めばお宝写真があります。)
毎年このシーズンに全国の動物園獣医を悩ませる伝染病があります。
それは「高病原性鳥インフルエンザ(HPAI:Highly Pathogenic Avian Influenza)」です。
当園も昨年は死亡野鳥(ハシブトカラス)での初の園内発生を経験しました。
園をあげての防疫対策により、なんとか飼育鳥への感染を防ぐことが出来ました。
臨時閉園や消石灰散布ゾーンの立ち入り制限等で、来園者の皆様にもご不便をおかけしましたが、動物達が健康に生活できてこその動物園だと思いますので、ご容赦ください。
そして、今シーズンもすでにHPAIは猛威を振るい始めています。このブログを書いている時点で、北海道・宮城・鹿児島・岡山の死亡野鳥からウイルスが確認されています。年々発生件数が多くなっているように感じます。
世の中には他にも動物の伝染病はあるのですが、このウイルスは越冬のため日本を訪れる渡り鳥が持ち込むため、他の伝染病と比較し対応が困難です。具体的には、
① 豚熱などの他の伝染病のように水際対策(港や空港での対策)が出来ない
② 渡り鳥の移動距離は非常に長く、またいくつかの越冬ルートがあるため、日本のどこかで発生すれば、翌日には全国で発生する恐れ(今年度も北海道→宮城→岡山・鹿児島)がある
といった点です。
このような特徴を踏まえ、王子動物園では発生に備えた資材を常備しつつ、国内発生すれば対応レベルを迅速に引き上げ、まずは「野鳥と飼育鳥の接触防止」対策を講じています。なお、今後、兵庫県内で発生すれば「来園者の方と飼育鳥の接触防止」のための対策(水禽テラスの閉鎖)を追加で実施する予定です
上述の「野鳥と飼育鳥の接触防止」対策をするうえで、一番大変な思いをさせてしまっているのが、ふれあい広場の鳥達です。
最近は鎮静化→発生までのサイクルが短く、ふれあい広場の鳥達は1年の半分以上をネットで囲われた環境に避難してもらっています。
ちなみに、高病原性の「高」は鶏に対しての病原性であり、全ての鳥類に対して致死的な症状を引き起こすわけではありません。感染しても軽度な症状のみで回復する種もいます。しかし、鶏への高い病原性(死亡率が高く、感染力も強い)があるため、家畜伝染病予防法で「1つの農場で発生した場合、その農場の家禽(鶏、ダチョウ、エミュー、アヒル、ホロホロ鳥など)はすべて殺処分」ということが定められているのです。
当園に当てはめると、ふれあい広場と北園という少し離れた場所で飼育している家禽達ですが、どちらかの場所で1羽でも発生した場合、全羽が殺処分対象となります。想像するだけでも恐ろしい状況で、昨シーズン中の園内死亡家禽の検査(寿命等での死亡であっても、園内発生中は検査していました)時には、関係者一同「どうか出ないでくれ。。」と願っており、中には検査中に涙を流す職員もおりました。
恐ろしい伝染病ではありますが、正しい知識に基づき、今年もしっかりと対策を講じて乗り切りたいと思います。
より詳細なHPAIの情報はhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/にて確認できます。
王子の獣医
(HPAIは関係ないですが、若かりし頃のガッチャンの写真です。生後3日目ですが、すでにガッチャンの風格が出てますね。)
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