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最新ニュース

  • 2023年11月30日

    王子動物園からのお願い

    先日、王子動物園の動物に来園者が石を投げるという事案が発生しました。

    幸い、動物にケガはありませんでしたが、動物に石や物を投げると、ケガをしたり、驚いたりして、大変キケンです。
    また動物に勝手に食べものを与えると、おなかをこわしたりします。
    このようなことは、大変悲しい出来事です。
    動物たちのために、絶対に行わないでください。
    保護者の方や、引率の先生の方には、お子さん、児童・生徒の皆さんに、動物に石や物を投げることや食べものを与えることは、動物たちにとってキケンであるため、絶対にしないように、ご指導くださいますよう、お願いいたします。

    画像1‗王子動物園外観

    王子動物園職員一同

  • 2023年11月29日

    動物専門員の日常 ♯04 “番外編 世界アリクイの日~World Anteater Day~”

    こんにちは。11月29日は“いい肉の日”や“いい服の日”など記念日満載な日ですが、

    実は“世界アリクイの日~World Anteater Day~”でもあります。“アリクイを取り巻く環境の現状を広く知っていただき、保全へと繋げたい”そんな願いを込めて、王子動物園で飼育しているオオアリクイを詳しく紹介したいと思います。

    世界アリクイの日

     

    いきなりですが、オオアリクイの担当になって、私が最も聞かれる質問って何だと思いますか?答えは、「何食べているの?やっぱり蟻を食べているの?」です。
    この質問、とっても多いです。みなさんのご想像の通り、野生下ではアリやシロアリを食べて生活をしています。60㎝にも達する舌を1分間に160回以上も出し入れして、1日約30,000~35,000匹を舐めとって食べると言われています。アリの巣を見つけるための発達した嗅覚は、なんと人間の約40倍と言われており、寝ている時間以外の活動時間のほとんどを採食に費やしています。ちなみに歯は持っておらず、ネバネバした舌には絡めとったアリを逃さないように後ろ向きの小さなトゲがついています。また大変強い前肢をもっており、前肢の第2・3指(人差し指と中指)に発達した鋭い爪を持ちます。この爪を使って蟻塚を崩したり、木の皮をめくったりします。アリやシロアリを食べるために特化した身体の作りになっている訳ですね。

     

     

    IMG_8690

     

    飼育下では、さすがに蟻を毎日、準備することができないので代用食として王子動物園では鶏ミンチ肉、食虫目ペレット、ヨーグルト、卵、粉ミルクをお湯でドロドロに溶かしたものを与えています。現在、オスのブンバ(静岡市立日本平動物園生まれ)とメスのサニー(名古屋市立東山動植物園生まれ)の2頭を飼育していますが、2020年5月に王子動物園へと来園した際は餌の調整(量や配分)が難しかったようです。

     

    IMG_9890

     

    「最初は、餌食いが悪くてかなり苦労したよ~」と先輩に言われていたのですが、今では2頭とも1日2回もりもり食べてくれています。ちなみに、オスのブンバはなぜか寝ながら食べるスタイルです。私は初めて見たときに驚きました(笑)

     

    そんなオスのブンバとメスのサニーですが、ペアリング計画が進行中です。オオアリクイ属は交尾以外、単独で生活する社会性を持たない動物です。慣れない個体同士が接触すると威嚇行動に出る場合もあり、まずはお互いが慣れることが必要でこれまでタイミングを見ながら同居を進めていました。今はまだ2頭の間には絶妙な距離間があり、ペアリング成功への道のりはまだまだ先のような気がします。じっくりと見守っていただけると嬉しいです。

     

    最後に王子動物園がどうやって種の保存の一助になっているのかを紹介したいと思います。
    種の保存というと、サニーとブンバのペアリング計画のように、“絶滅危惧種の繁殖”をイメージされる方も多いのではないでしょうか?もちろん、それも正しいことではありますがそれだけではありません。動物の展示を通じて、オオアリクイのこと自体とそして、その動物が置かれている環境を知ってもらうことも、とても大切です。

    そもそも、その動物自体を知らないと
    何を助けなければならないのか、なぜ助けなければならないのか、分からないと思うのです。

     

    オオアリクイは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅のおそれのある野生動物のリスト、通称レッドリストにおいて絶滅危惧種(VU:危急)に分類されています。森林伐採や農地転用、高速道路の建設と言った生息地の分断化や縮小、スポーツハントによる乱獲、ペットなどの商用目的の密猟が原因で野生下では絶滅に近いと言われている動物でもあります。国内では現在、6園館17個体(2022年12月末地点)が飼育されており、それぞれの園館でペアリング計画が進行しております。ちなみに近畿地方でご覧いただけるのは、王子動物園だけとなります。

     

    意外にオオアリクイが絶滅危惧種であることや国内での飼育頭数が17個体であり、ペアリング計画が進行していることなど知られていないと感じることが多いです。

    「何食べているの?やっぱり蟻を食べているの?」

     

    私はこの質問を頂く度に、オオアリクイのことをどこまで知っていただけるだろう。
    野生下の環境の事もどこまで興味を持っていただけるだろうか。とワクワクします。
    動物の飼育展示を通じて来園者の方にその動物に興味を持って頂くことが
    種の保存への第一歩だと思っています。

     

     

    本日、11/29は“世界アリクイの日” \(^▽^*)当園のブンバとサニーを通じて、野生下のオオアリクイの現状にも興味を持っていただけると嬉しいです。

    動物専門員 あお

     

     

  • 2023年11月27日

    ZiZi通信 No.86 タンタンの階段....

     

    今日は、パンダ館です。

    タンタンがよく横になってる寝台への上り下りが楽なように緩い階段新設しました。

    これは「X」で11/23にすでに配信されています。

     

    振り返ると、パンダ担当から階段の相談がありました。

    DSC08265

      

    寝台から降りる石の段がタンタンにはきつくなっていると...

    いろいろ考えてみました。

    イメージ図原案

     

    業者さんの案です。そして製作、設置。

    20231001144856-0002

     

    出来上がり!

    DSC08636

     

     

    私  「ヒノキのいい匂い!」

    担当者「ええやん!なんか旅館の階段みたいや。」

     

    タンタンは気持ちよく使っているようで何よりです。

     

    ZiZi1号 

  • 2023年11月21日

    六甲山の自然 8 アサギマダラ

    アサギマダラ Parantica sita

    アサギマダラは秋になると北海道や本州から南西諸島や台湾に渡りをする蝶として有名です。春から夏にかけては反対のコースで北上個体が発見されているという報告があります。

    六甲山では秋の渡りの季節に見ることができます。その年によって異なりますが9月下旬から10月中旬頃に飛来してきます。10月初旬、たくさんのアサギマダラが飛来することで有名な摩耶山天上寺へ行ってきました。運良く100匹以上のアサギマダラに出会うことができました。

    ここにはコバノフジバカマが植えられていて、その蜜を吸いにアサギマダラがやってきます。

    フジバカマなどの植物にはピロリジジンアルカロイド(pyrrolizidine alkaloid; PA)が含まれおり、この毒性成分を摂取することで捕食者から身を守っていると言われています。また、オスは性フェロモン分泌のためにピロリジジンアルカロイドの摂取が必要であると言われています。

     

    写真1

     

     

    コバノフジバカマの蜜を吸うアサギマダラ

     

    アサギマダラの渡りに関してまだ充分に解明されていませんが、翅(はね)に採取日や採取場所、採取者の名前などをマーキングして、再捕獲する調査がおこなわれており、2000 ㎞以上移動した記録も報告されています。

     

    写真2

     

     

    翅(はね)のマーキング

    成虫の翅(はね)の白っぽく見えるところは、浅葱色(あさぎいろ、薄い藍色)と言って、名前の由来ともなっています。この部分は半透明でうっすらと透けて見えます。

     

    写真3 写真4

     

    翅(はね)をとおしてして花が透けて見える

     

    アサギマダラの雄の後翅(こうし)には黒褐色の斑紋(性標)があり、メスにはありません。これにより雄雌の区別ができます。

     

    写真5

     

     

    オスのアサギマダラ(赤丸:性票)

     

    写真6

     

    メスのアサギマダラ

     

    摩耶山天上寺は花の綺麗なところで、季節によって桜やヤマボウシなどいろいろな花が咲いていて、それを求めて蝶たちも訪れます。こんなに美しいものを見せていただけることに感謝しつつ、自然と人間が共存できるようにお祈りさせていただきました。

     

    写真7

     

     

     

     

     

     

  • 2023年11月18日

    高病原性鳥インフルエンザについて

    (今回はちょっと難しく、楽しくもない内容ですが、最後まで読めばお宝写真があります。)

     

    毎年このシーズンに全国の動物園獣医を悩ませる伝染病があります。

    それは「高病原性鳥インフルエンザ(HPAI:Highly Pathogenic Avian Influenza)」です。

     

    当園も昨年は死亡野鳥(ハシブトカラス)での初の園内発生を経験しました。

    園をあげての防疫対策により、なんとか飼育鳥への感染を防ぐことが出来ました。

    臨時閉園や消石灰散布ゾーンの立ち入り制限等で、来園者の皆様にもご不便をおかけしましたが、動物達が健康に生活できてこその動物園だと思いますので、ご容赦ください。

     

    そして、今シーズンもすでにHPAIは猛威を振るい始めています。このブログを書いている時点で、北海道・宮城・鹿児島・岡山の死亡野鳥からウイルスが確認されています。年々発生件数が多くなっているように感じます。

     

    世の中には他にも動物の伝染病はあるのですが、このウイルスは越冬のため日本を訪れる渡り鳥が持ち込むため、他の伝染病と比較し対応が困難です。具体的には、

    ①    豚熱などの他の伝染病のように水際対策(港や空港での対策)が出来ない

    ②    渡り鳥の移動距離は非常に長く、またいくつかの越冬ルートがあるため、日本のどこかで発生すれば、翌日には全国で発生する恐れ(今年度も北海道→宮城→岡山・鹿児島)がある

    といった点です。

     

    このような特徴を踏まえ、王子動物園では発生に備えた資材を常備しつつ、国内発生すれば対応レベルを迅速に引き上げ、まずは「野鳥と飼育鳥の接触防止」対策を講じています。なお、今後、兵庫県内で発生すれば「来園者の方と飼育鳥の接触防止」のための対策(水禽テラスの閉鎖)を追加で実施する予定です

     

    上述の「野鳥と飼育鳥の接触防止」対策をするうえで、一番大変な思いをさせてしまっているのが、ふれあい広場の鳥達です。

     

    最近は鎮静化→発生までのサイクルが短く、ふれあい広場の鳥達は1年の半分以上をネットで囲われた環境に避難してもらっています。

     

    ちなみに、高病原性の「高」は鶏に対しての病原性であり、全ての鳥類に対して致死的な症状を引き起こすわけではありません。感染しても軽度な症状のみで回復する種もいます。しかし、鶏への高い病原性(死亡率が高く、感染力も強い)があるため、家畜伝染病予防法で「1つの農場で発生した場合、その農場の家禽(鶏、ダチョウ、エミュー、アヒル、ホロホロ鳥など)はすべて殺処分」ということが定められているのです。

     

    当園に当てはめると、ふれあい広場と北園という少し離れた場所で飼育している家禽達ですが、どちらかの場所で1羽でも発生した場合、全羽が殺処分対象となります。想像するだけでも恐ろしい状況で、昨シーズン中の園内死亡家禽の検査(寿命等での死亡であっても、園内発生中は検査していました)時には、関係者一同「どうか出ないでくれ。。」と願っており、中には検査中に涙を流す職員もおりました。

     

    恐ろしい伝染病ではありますが、正しい知識に基づき、今年もしっかりと対策を講じて乗り切りたいと思います。

     

    より詳細なHPAIの情報はhttps://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/にて確認できます。

     

    王子の獣医

    がっちゃん

    (HPAIは関係ないですが、若かりし頃のガッチャンの写真です。生後3日目ですが、すでにガッチャンの風格が出てますね。)

  • 2023年11月16日

    六甲山の自然 7  ハンミョウ、ニワハンミョウ

    ハンミョウ(ナミハンミョウ)Cicindela japonica  本州,四国,九州,対馬,種子島,屋久島に分布

     

    ニワハンミョウCicindela japana  北海道,本州,四国,九州に分布

     

     

    ハンミョウ(ナミハンミョウ)は触角や脚まで全身が赤、青、緑に彩られた昆虫の中でもトップクラスに美しい生物です。

    この綺麗な色彩は色素ではなく構造色と言って、特定の波長の光を反射させることで色をつけていると言われています。インコやクジャクの光輝いている羽や無色透明な液で作られたシャボン玉が綺麗な虹色に見えるのも構造色です.

     

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    ニワハンミョウの色彩は光沢がなく、茶色でわずかに緑がかっています。地面で動かずにいると足元にいても気付かないことがあります。翅には白い小さな斑紋があります

     

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    両種ともに平地や山地などの草の生えていない空き地や林道などの舗装されていない地面で春から秋にかけて見かけます。

    大きな顎で昆虫を捕まえて食べます。

     

     

    子供のころには、空き地や未舗装の道路でよく見かけました。そのような場所を歩いているとハンミョウが「ついておいで」と言わんばかりに、近づくと飛んで逃げて、私の進む方向に止まり、また近づくと、これを繰り返す行動が見られました。

    これが面白くて、しばらくついて行ったことを懐かしく思い出しました。

    このような行動をとるのでハンミョウは「みちしるべ」や「みちおしえ」と呼ばれたりします。昔は山に近い住宅街で普通に見られていたのですが最近ではほとんど見ることがなくなりました。

     

     

    先日、六甲山高山植物園でたくさんのハンミョウが道案内をしてくれました。植物園などたくさんの花が咲いているところには、それを求めて虫たちが集まり、その結果、昆虫食であるハンミョウも集まってくるのだと思われます。

    住宅街周辺でのハンミョウの減少は、開発による空き地や未舗装路の減少やそれに伴う餌資源である他の昆虫の減少などが原因ではないかと思われます。