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2021年11月16日
資料館レポ№16 亀井一成 飼育員~みんなに愛され70年~
動物園の飼育員といえば、今では動物好きの子供たちがなりたい上位にくる 仕事ですが、かつて、王子動物園にはこの人をテレビで見て目指したという人気の動物飼育員がいました。1951年の開園から1990年まで在籍された亀井一成さんです。東のカバ園長、西山登志雄(上野動物園のカバの飼育係を経て、1981年より東部動物公園の初代園長)、西の亀井一成と言われるほど日本では有名な飼育員でした。
亀井さんは1970年、80年代にテレビや講演会に頻繁に出演されて、動物園の魅力や動物のすばらしさを伝えるのがとても上手な方でした。とくに、聴衆を泣かせる話をする名人で、王子動物園の宣伝にも大きく貢献してくれました。
<諏訪子に乗る亀井さん(19歳)>
亀井さんの飼育の実績で取り上げられるのが、日本で初めてのチンパンジーの人工保育の成功です。以下50年史の記事からです。
「1963年、6月22日チンパンジーに待望の赤ちゃんが誕生した。しかし、母親の摩甲は子供を抱きかかえているが母乳を与えている様子がなく、母乳が出ないと判断し、亀井一成飼育員はなかなか離さない母親から子供を取り上げ、人工保育が始まった。しかし、前例がほとんどないため、小児科医に相談したり、外国の文献を調べたり、人用の人工乳を工夫して飲ませたり、おむつをさせたり、夜は自宅に連れ帰り一家総出で育児に専念した結果、立派に成長し、公募によりチェリーと命名された。」
<チェリーを抱っこした亀井さん>
退職後は、動物科学資料館で「こども動物相談」コーナーを開設して子供たちに豊富な経験をお話されていました。著書には「ゾウさんの遺言」「チンパンジー神ちゃんの日記」「亀井一成のなぜなぜどうぶつ相談室」など多数あります。動物科学資料館に置いていますので、ご覧ください。
<相談コーナーの亀井さん>
亀井さんは2010年にお亡くなりになっていますが、チンパンジーの「チェリー」も2014に51歳で亡くなりました。きっと天国で再会し仲良く過ごしていることでしょう。
SHIRYOUKAN
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2021年11月01日
資料館レポ№15 希少動物の繁殖~みんなに愛され70年~
動物園が果たす大きな役割として「希少動物の繁殖」があります。自然豊かな地球上で長い年月をかけ、進化し、種の多様性が見られるようになった動植物が近年の人間の社会経済活動によって絶滅する種が急速に増えた現状があります。希少な野生動物を飼育し、一般の人に向け展示してみてもらうことで成り立っている動物園ですから動物園の存在意義を問われた際、世界の動物園は野生動物の繁殖や保護を第1の役割とした訳です。現在、日本の動物園では各園館が協力し、動物の貸し借り(ブリーディングローン)を活用し、繁殖に取り組んでいます。また、環境省と連携して日本の絶滅危惧種である「ツシマヤマネコ」や「ライチョウ」などの域外保全(野生個体を動物園で増やし、生息域に戻す)に一部の動物園が取り組んでいます。
<ジャイアントパンダ タンタン>
ジャイアントパンダは世界中で繁殖に取り組んでいる典型的な事例です。ジャイアントパンダは今では中国の四川省の山奥にのみ生息する動物ですが、その数は1600頭まで数を減らし、最も絶滅の危機にある動物とされていました。中国では、その生息環境の保護に力をいれるとともに、保護センターでの繁殖に力を注ぐようになりました。海外の動物園も共同繁殖研究という形でジャイアントパンダを借り受けて繁殖させ、中国に戻すという協力をするようになりました。王子動物園もその一員として参加しています。さらに、中国では、繁殖個体を若い時期から自然環境の中で育て、成獣になって野生で生活できるよう取り組んでいます。そのような努力もあり、生息数は1800頭を超え、絶滅の危険度ランクをIUCN(国際視線保護連合)が下げました。
<四川省 臥竜の保護研究センター>
王子動物園の動物の繁殖で大変な苦労したのは、アジアゾウ「ズゼ」の3回の出産ではないでしょうか。現在のペアのオスのマックとズゼはとても仲良しで相性も抜群でした。初めての妊娠は2002年でしたが、残念ながら死産となりました。無事出産できたのは2004年に誕生したメスゾウの「モモ」でした。日本でアジアゾウの出産は初めてで日本動物園水族館協会より繁殖賞を受賞しました。ところが、ズゼが授乳しなかったため、人工保育となり、生後8か月でボールで遊んでいる際に、前肢を骨折して寝たきりとなりました。床ずれ防止の寝返りや清拭を毎日行うなど手あつい看護の甲斐もなく、1歳で死亡しました。
<2004年に誕生した モモ>
次の出産は2007年、オスの「オウジ」が誕生しました。ズゼはまたしても授乳させてくれませんでした。前回、骨がもろかったという反省から外国からゾウ用のミルクを取り寄せ、人工保育を行いました。しかし、1歳過ぎて、前肢を骨折し、寝たきりになりました。タイに職員を派遣して看護の方法を調べてオウジ の世話を続けましたが、2012年、腸捻転が原因で亡くなりました。
<2007年に誕生したオウジ>
ゾウは本来、群れで生活する動物で、その中で先輩ゾウから様々なことを学習して生きるすべを身に着けます。「ズゼ」は幼くして母ゾウから離れ、その経験がありませんでした。今後、繁殖を成功するにはズゼが子育てを学習して自然保育することが必要と考えるようになりました。そして、4回目の妊娠をズゼがしたことが、判明し、群れで飼育していて、授乳中のメスいる千葉・市原ぞうの国へ妊娠安定期に移動することになりました。2014年、オスの「結希」が誕生しました。ズゼの群れでの学習を期待しましたが、授乳させることはできませんでした。市原にいた授乳中のメスゾウが乳母をしてくれ、過去2回のような骨の異常も見られず、乳兄弟の姉さんゾウと一緒にすくすくと育っています。
<結希の里帰り/向かって右が結希>
飼育下での繁殖は自然下とは異なる要素がいくつもあり、成功させるためにはこれらを1つ1つ解決していかなければなりません。失敗で得た知識や経験も糧にして、そのノウハウを将来につなげていく必要があるでしょう。
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