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2021年09月16日
資料館レポ№12 阪神淡路大震災~みんなに愛され70年~
1995年1月17日午前5時46分、神戸市を中心とする兵庫県南部地方にマグニチュード7.3、最大震度7の非常に強い都市直下型の地震が発生しました。死者6,434名、負傷者43,792名、ビルの倒壊、火災や電気、ガス、水道などライフラインの長期のストップなどの大惨事でした。
<倒壊した阪神高速道路>
では、その時の王子動物園の様子はどうだったのでしょうか。これは50年史に詳しく書かれています。
まず動物たちの様子です。
〇最初に飼育員が動物園にたどり着いたのが、午前6時30分。
動物が脱走していないか確認、やがてあいついで到着した飼育員や獣医師と手分けして動物が全員無事であることを確認した。
〇人間同様、動物たちにとってもこの地震は非常に驚きであった。
アジアゾウの「諏訪子」はキュキュとしきりに鳴いていた。
カバの「茶目子」はずっとプールに潜り、出てこない。
コアラは止まり木の上で、緊張した姿勢をとっていた。など
しかし、動物たちに大したけがもなく、普段の様子の動物が大半でした。動物舎は平屋建てで、動物が壊して脱走できないよう頑丈な造りだったで、古くても大丈夫でした。フラミンゴ池のプールに亀裂が入り、水が抜けてしまったことや動物科学資料館の展示物や剥製標本が一部壊れたなどの被害はありました。
その当時、動物が震災を予知する行動をとっていたのではないかという問い合わせが動物園にたくさん寄せられ、大学等でそのような研究もされたようですが、明確な予知行動は証明されませんでした。
大変だったのは、その後の動物の飼育です。ライフラインがストップしたため、動物の暖房、給水や清掃の水の確保に苦労したと記録されています。
〇爬虫類はガスによる給湯式の暖房であったため、ガスが復旧するまでプールを温めることができなかった。
ワニ類は温度が低下すると水の底に沈み、窒息死する恐れもあるため、飼育員はワニやニシキヘビの室内をファンヒーターで暖めるとともにワニの口にロープをかけて水面上引き上げるなどの対応をガスが復旧する2月23日まで実施した。
〇水は井戸水を利用したが、くみ上げて運ぶ作業は重労働であった。水道が復旧する1月30日まで続いた。
<他動物園からの救援物資>
震災で高速道路が不通、一般道が大渋滞でしたので、動物のえさの調達に不安があり、とくに、コアラの唯一のえさとなるユーカリに関しては、鹿児島や岡山から搬送されてくるので、入荷困難な場合は天王寺動物園にコアラを一時預けることも要請していました。しかし、1月19日からユーカリが到着し始め、窮地を脱しました。
肉、魚、野菜や果物といったエサは中央卸売市場より運んでもらっていましたが、道路事情が悪く、仕入れに苦労をしていた際、20日には京都市動物園より応援物資としてこれらが届けられました。その後も全国の動物園より応援の申し出がありました。
日本動物園水族園協会では、この震災を機会に、災害などで困っている動物園、水族園があったときには、地域ブロックで助け合うシステムをつくり、緊急時に対応しています。
<園内の自衛隊のようす>
王子動物園は震災発生後、3月23日の春分の日に再開するまで、65日間休園しました。その間、動物園内は災害支援に来てくれた自衛隊の基地として活用されました。動物科学資料館は一時、避難所や遺体安置所となり、職員はその対応業務にも従事しました。
現在、異常気象が頻発し、地震もいつどこで起こるかわからない時代になりました。王子動物園の再整備計画にあたっては、緊急事態への対応、特に、「お客さんをいかに安全に避難させるか」「動物の安全をいかに守るか」といった観点も十分加味する必要があるでしょう。
SIRYOKAN
※写真はクリックすると大きくなります。
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2021年09月03日
資料館レポNo.11 夏休み動物のからだ探検隊開催
今年もコロナ禍で、大人数で行われる教室、イベントは中止になりましたが、コロナ禍でもなんとか教室が行えないかと、少人数の教室を開催いたしました。
この教室は2回目で、動物園教育、環境教育の研究者である松本朱実先生(近畿大学)にご協力いただき、教室のプログラムをデザインし実施しています。
資料館にあるいろいろな標本を利用し、参加者が自ら探求して学ぶことを目標にしています。
今回は「焼き鳥から見えてくる鳥のひみつ」をテーマに、小学校4年生から6年生の8名の方に参加していただきました。。
まずは焼き鳥を食べて?もらおうと、紙で作った焼き鳥を配り、
配られた焼き鳥の部位をあてるクイズから
みんな緊張気味。手羽先、手羽元、むね肉、もも肉、いつもニワトリのどこを食べているかわかるかな? クイズは意に反していまいちもりあがりませんでした。
さて、次は骨ならべ。ニワトリの手羽元、手羽先、骨はどうなっているのかな。
資料館職員が作ったニワトリのつばさの標本をならべてもらいました。当然、周りの肉は無駄にせず職員がいただきました。うーん、翼の先の方がむずかしな~自ら考えることを大切にしている教室。まちがってもいいので、楽しんで並べてもらいました。ヒトと比べるとわかりやすい。小型の人骨模型は結構役に立ちます。 鳥って、指が3本しかなかったんだ。 発見しましたね。
次は動物園にいる鳥の骨ならべだよ。
タンチョウは大きいけど、ニワトリとよくにているので簡単にならべることができました。すばらしい
フラミンゴも見てみようか。やはりニワトリとにているね。
次は生きたニワトリを観察しよう。
いつもはふれあいコーナーで、ふれあいスタッフとともに資料館まで出張してくれました。
名古屋種のなごやんくんはみんなにに翼を見せてくれました。
カツラチャボのりんごちゃんは飛べるかな?の実験に協力。
生きたニワトリを、間近に観察できました。
次は飛べる鳥の翼のはく製を観察。
先ほど並べたフラミンゴの骨を翼にあてて、納得する子どもたち。
シロフクロウの羽の先に注目していた方もいました。
最後に当園最大級の鳥の骨格標本、ダチョウ。ダチョウのムネの骨には出っ張りがないことに気づきました。
参加者の皆さんは最初は緊張気味だったけれど、終わるころにはいろいろな発見をしたことを目を輝かせながら、語ってくれました。
鳥はなぜとべるのかを発表し、意見を共有し合いました。
松本先生(右)、いろいろご協力ありがとうございました。
今回はニワトリの骨格から鳥の飛べるひみつをさぐるとともに、食としてのニワトリの存在を自然とどうつながっているのかを考えてもらうことも目標としていました。
目標を達成できたかどうかを評価し、次につなげていきたいと思います。
Norigoriチャン
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2021年09月01日
資料館レポ№10 獣舎の整備~みんなに愛され70年~
1951年に、たった8カ月の突貫工事で開園した王子動物園でしたが、獣舎は十分ではなく、仮設や移動式の檻に入れて展示せざるを得ませんでした。動物にとっても狭い場所に閉じ込められる状況は良いものではありませんでした。その後、次々と獣舎の整備が続けられます。特に、70年代80年代は神戸市がニュータウン開発と湾岸の埋め立てで都市経営の優等生とされ、黒字を動物園の整備に投資できた活気のある時代でした。
1955年ころの東園
1978年に完成した放養式動物舎は老朽化した野外劇場を取り壊してその跡地に建設されたものです。狭い檻から動物を開放するというコンセプトから広い運動場を備え、2階から運動場を観覧し、1Fは動物の寝室にするなど狭い敷地を有効利用したアイデア獣舎でした。現在は、チンパンジーやオランウータンなどを飼育していますが、当時はトラ、ライオンやクマが飼育されていました。
完成当時の放養式猛獣舎
次いで登場したのは、1979年に完成した太陽の動物舎で爬虫類と夜行性の動物を飼育しています。中央に熱帯植物の温室を配し、ガラス越しに見るワニやヘビの生態的背景に配慮し、夜行性動物エリアでは出入り口を洞窟にして観覧通路に窓もなく、展示室を昼間はブルーライトで薄暗く、夜は昼光色の照明で昼夜逆転して、夜行性の動物の行動を昼間に見やすくする工夫がされています。
太陽の動物舎完成式写真
旧式な獣舎を見やすく、さらに系統的な展示にそろえていくため、その後も再整備計画が立てられ、実行されていきます。阪神淡路大震災前の最後の大きな獣舎整備は1994年に完成したアシカ池、ホッキョクグマ舎です。特徴は当時では最先端であった大型アクリル板を設置し、水中の動物たちの生態を近くで観察でき、広い運動スペースを四方から観察できるように工夫がされていることでした。また、ホッキョクグマの運動場はカナダのハドソン湾沿岸の情景を再現したもので、朽ちた木、岩場、5mの高さから流れる滝などアメリカの専門会社へ委託して建設されたものでした。
ホッキョクグマ運動場
再整備が急ピッチで進んでいた王子動物園ですが、1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、王子動物園の残された老朽化した獣舎の再整備のスピードは弱まります。現在も、まだ、ゾウ舎やサイ舎など1950年代に建てられた獣舎が残っています。
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SHIRYOKAN
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