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2024年12月19日
動物専門員の日常#15 冬の求愛ディスプレイ~フラミンゴたちのダンス~
このあいだまで暑くて暑くて、獣舎へ氷を運ぶために走りまわっていたのに、いつのまにか寒くなり、ホースの蛇口をひねる度に冷たさが肌を刺すようになりました。
いよいよ、冬が来ました。
あっという間に1年が過ぎてしまう・・・と毎年、つぶやいているような気もするのですが動物たちにとっては違うようで、季節の移ろいに敏感です。
そのなかでもフラミンゴたちの求愛ディスプレイが日増しに盛り上がりをみせ、群れで舞い踊る姿がとても迫力があり美しいため、今日はそちらを紹介したいと思います。
現在、王子動物園では約200羽のフラミンゴを飼育しています。薄いピンク色の羽根が特徴的なのがヨーロッパフラミンゴで赤い羽根が特徴的なのがベニイロフラミンゴです。
11月中旬の気温が急に下がったころから、求愛ディスプレイがはじまりました。
最初はぽつぽつと数羽程度だったのが、日増しに10羽、20羽、30羽と。多いときには数えるのが難しいぐらいのフラミンゴたちが一斉に踊ります。
代表的な求愛ディスプレイは“旗振り”、“敬礼”、“行進(マーチング)”と呼ばれる3種類があり、それらが組み合わさって、オスもメスも一緒に参加し集団で踊ります。
▼旗振りと敬礼
“旗振り”はまるで旗をふるように、自分の首を左右に振る動作のことです。スピードよく、切れよく一斉に動かします。
“敬礼”とは翼を勢いよく広げる動作です。首の向きは上に向かって鳴きながら敬礼をするタイプと首を水平に向かって行うタイプがいます。
▼行進(マーチング)
“行進(マーチング)”は言葉の通り、一つの方向に向かって集団で歩く動作です。速足となり首を少しきゅっと傾けます。この動作が始まるきっかけは、あまりよく分からないのですが“旗振り”と“敬礼”がひと段落ついたときに一斉に起こることが多いです。
ちなみに私の1番のお気に入りなのは、“行進(マーチング)”の動き
首をきゅっと傾けて速足で歩く姿、ユニークで素敵ではないですか?
恋のシーズン到来はこれからが本番です!
例年1~3月にかけてその熱はピークに達し、徐々に鳴き声は甲高く力強さを増し、羽根の色合いも艶やかに燃え立つように変わっていきます。
フラミンゴの名前の由来は諸説ありますが、
ラテン語でflamma(炎)意味する説があるようです。
なるほど。
そう言われてみたら、フラミンゴが集団で舞い踊る姿はまるで炎が揺らめいているようです。
寒いなかでもじんわりと温かい気持ちになりました。
動物専門員 あお
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2024年11月03日
動物専門員の日常#14 動物の体重をはかる集い~想定外だったシロフクロウの大きさ~
みなさん、こんにちは。最近、何か想定外の出来事はありましたか?
SNSや生成AIが私たちの日常に溶け込んできて、実際に体験をしなくてもいろいろな情報を簡単に手に入れられるようになりましたよね。何か知りたいことがあれば、すぐに答えにたどり着けるし、物事の予測もしやすくなったと感じることもあります。
でも、飼育業務はそんなデジタルの便利さとは違うような気がします。
動物たちのことを深く理解するには実際に関わり、観察することが欠かせません。
私は最近、想定外だと感じることがたくさんありました。
今回は、王子動物園で開催される“動物の体重をはかる集い”にちなみ、
その内の1つであるシロフクロウのヒナの大きさを紹介したいと思います。
屋外展示場にて、シロフクロウのオスを1羽、メスを2羽飼育しています。
今年の6月にメスの1羽が6つの卵を産卵し、6月下旬にはそのうち5羽が孵化し、現在は4羽が成長しています。
▼7月初旬
▼9月下旬
シロフクロウファミリーの子育てや屋外展示場における暑さ対策、今後のヒナについてはボリュームたっぷりな内容になってしまうのでどこかの機会でまた紹介をしますね。
さて、私にとって想定外の出来事。
それは“シロフクロウのヒナの大きさ”です。シロフクロウを含むフクロウ類は同じ巣で産まれた兄弟でも体の大きさに著しい差が見られることが知られています。ある時期に数日おきに卵を産むのですが、フクロウ類の母親は最初の卵を産むとすぐに温め始めるため、その一時期に産んだ卵のうち、最初の卵と最後の卵とでは、孵化する時期がかなり異なります。これは“非同時孵化(ひどうじふか)”と呼ばれ、確実に子孫を残すための戦略だと考えられています。
今回、誕生したヒナたちも体の大きさが全く、異なりました。
1号(最初に孵化した個体)と5号(最後に孵化した個体)の大きさの差は
パッと見、約4倍もあります!!(/・ω・)/
まさに、想定外!
餌が少なくなったときに初めに産まれたヒナが後から産まれたヒナを食べてしまうこと(いわゆる兄弟殺し)があるとも言われており、実際に体の大きなヒナが小さなヒナの上に乗りあげたり、突いたりしていた時期もありました。野生のシロフクロウの生き残りの厳しさを垣間見たような気がしました。
▼7月初旬の様子
また、この時のヒナの成長スピードは、めちゃくちゃ速かったです。
休み明けにシロフクロウ舎でヒナを確認をするたびに、来る日も来る日も驚いていました。
ほんと、想定外!
それもそのはず、一生の間で最も攻撃に弱いこの時期をヒナたちは短時間のうちに通り過ぎないといけません。ただただ食べて、眠り、大きくなることを繰り返していました。
▼腹ばいになって寝るヒナ
▼ふわふわの綿羽で覆われたヒナ
さて、11月現在、綿羽は生え変わり成鳥のシロフクロウと同程度の大きさにまで成長しています。
最近、取り組みを強化しているのはハズバンダリートレーニングを利用した体重測定です。捕まえて体重を無理やり図ることもできるのですが、できるだけ負担をかけずに行うために、ヒナたちに協力してもらいながら体重を測定しています。
▼体重測定の様子
一見、簡単に乗っているように見えるのですが、シロフクロウにとって体重計は未知の物体です。恐怖心を植え付けないように少しずつじっくりと時間をかけて慣らしていくことが大切です。ただただひたすら、辛抱強く待ちます。
ヒナ全羽への体重測定のためのハズバンダリートレーニングは、
実はまだ、未完成の状態です。
すぐに体重を測れるヒナもいたら、体重計を警戒し全く近づいてもきてくれないヒナもいます。個性はそれぞれだな~と感じながら、取り組んでいます。
なので、体重測定をしている様子を見かけたらそっと見守ってくれると嬉しいです。
(※ヒナの個体識別のために、羽根の一部に食紅を付けています。)
動物専門員 あお
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2024年07月10日
動物専門員の日常 #13 特別篇 “視力が低下したアシカへのハズバンダリートレーニング”
みなさん、こんにちは。
今日は特別編と題して、私ではなく他の動物専門員の取り組みを ちょっとアカデミックに紹介します(/・ω・)/
動物園における動物たちの飼育管理というのは、すごくバリエーションが広くてそして奥が深くて、何から紹介しようかをいつも迷うのですが最近、一緒に仕事をする中でそのトレーニングスキルの高さに思わず鳥肌が立つことがありました。
それは、カルフォルニアアシカ“カイト”のハズバンダリートレーニングです。
カルフォルニアアシカ(以下:アシカ)は大きく発達した眼球を持っているため、眼科疾患(角膜炎や白内障など)が多く見受けられます。個体同士の闘争や飼育環境下でのアクリルガラスや外壁との衝突、飼育水の種類、日光(特に紫外線)の影響、そして人間と同じで加齢も要因として挙げられます。これらの要因が複合的に重なり合い、アシカたちの眼球は傷つきやすく疾患が発生しやすいのです。
王子動物園で飼育をしているアシカたちも眼科疾患は例外ではなく、特に“カイト”(13才♂)は両目がほとんど見えていない状態でした。 “カイト”にとって住み慣れたアシカ池は日常生活を送る分には問題はありませんが、適切な獣医療を受けてもらうこと、生活の質(quality of life)の向上を考慮に入れるとトレーニングは不可欠です。
通常は正常な視力を持っている内にトレーニングをつくり、継続をすることが多いです。カイトの場合、視力が低下する前にターゲット棒や点眼など部分的にトレーニングをしていましたが、しばらく中断していました。そのため、ほとんど目が見えない状態でイチからトレーニングを作り上げる事になりました。
そこで、注目したのが視覚以外の他の感覚です。アシカは餌を食べるときに、主に視覚と口周りのヒゲ(感覚毛)を使っています。目を使って泳いでいる魚を発見し、感覚毛である口周りのヒゲで水の流れをキャッチし、魚を捕まえると考えられています。
そのため、たとえ目が見えなくても口元のすぐそばに餌の魚を持っていくと食べることができます。
ご褒美の餌(強化子)を与えることはできるので、ここから望ましい行動の形成を行っていくことにしました。
まずは、トレーニングの基本からです。 指定された位置に留まる基本姿勢の維持と吻タッチです。吻とは動物の鼻先のことで、手のひらやターゲット棒に鼻先をタッチしてもらいます。この吻タッチを覚えてもらうことによって、その先の行動形成のステップに進むことができるようになります。ただ、“カイト”の場合、ほとんど目が見えてないので吻タッチをするべきターゲット棒の位置が分からないことが課題でした。
「カイトにとって、どうすればターゲット棒の位置が分かるようになるのか」
考えぬいた末に、餌の魚の汁をぬったターゲット棒を使ってみることにしました。嗅覚を使って正確なタッチポイントを見つける作戦です。この嗅覚を利用する方法をきっかけに、カイト自身が正確にターゲット棒の位置を理解することができました。このターゲットトレーニングを基本とし、さらに聴覚を利用したトレーニングを組み合わせることによってカイトの反応が大きく変わりました。トレーニングのステップを1つずつ積み重ねることで今では、吻タッチ以外にも口周りのヒゲにターゲット棒を沿わせて行う伏せの姿勢やターゲット棒でトントンと地面を叩く場所に移動することなど様々なことが可能となっています。
▼ハズバンダリートレーニングの様子
これらができるようになったおかげでカイトへ行うことのできる検査や処置の種類(触診による身体検査、口腔内確認、点眼、傷への消毒など)も格段に増えました。 また、現在は獣医師と連携して採血のトレーニングに取り組んでいます。定期的に採血ができるようになると、その血液を検査することによって見た目では判断しづらい病気の早期発見につながります。
さて、今回初めて他の動物専門員の取り組みを紹介してみましたがいかがでしたか?
ハズバンダリートレーニングは数多くある飼育管理手法の1つです。
これは動物が覚えたらずっとできるようになるといった単純なものではなく日々、動物の状況を見極めながらトレーニングを積み重ねて継続していくことがなにより大切で、腕の見せ所でもあります。“動物専門員や飼育員が何のために懸命にトレーニングを行っているのか”“それを実施することで動物たちの生活や健康管理にどのように還元できるのか”
を知ることでもっと王子動物園の動物たちのことやその取り組みに興味を持っていただけると嬉しいです。
あ、最後に1つだけ・・・。 トレーニングを行っている動物専門員や飼育員を見かけたときは、 声をかけずにそっと見守ってくださいね。
よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ
動物専門員 あお
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2024年06月05日
動物専門員の日常#12 “リスと小鳥の森~繁殖に向けての取り組み②~”
リスと小鳥の森~繁殖に向けての取り組み~の続きの話です。リス担当に新しく与えられたミッションは“ニホンリスたちが安心して出産・子育てができる環境を整えること”でした。
ニホンリスは繁殖や休息・ねぐら用に樹上で小枝を組んだ球状巣を作ったり、樹洞を利用します。
“リスと小鳥の森”でも球状巣がつくられることはあったのですが、残念ながらそこで繁殖や子育てをすることは今までありませんでした。
▼樹上につくられた球状巣
これまでの歴代リス担当の経験則から、リスたちが安心して出産や子育てできるようにサポートした方がいいのではないか、もっと背の高い場所に安定した巣箱があった方がいいのではないか、との考えがありましたので、巣箱を増設することになりました。
もちろん、巣箱は飼育員の手作りです(/・ω・)/みんなで頑張りました。▼完成した巣箱はこちら
最初は1つ作るのに30~40分ほどかかっていたのですが、作り続けることでどんどん、どんどんスピードアップをしていきました。
恋のシーズンが始まる春までに完成させたいという想いもありましたので、昨年の秋~冬頃は来る日も来る日も私は巣箱をつくっていたような気がします。
▼設置した様子がこちら(おー!圧巻!ちょっと嬉しいです!!)背の高いところでも巣箱がぐらつかないように足場は増設工事してもらいました。
結果、総勢74個の巣箱があります(`・ω・´)ゞ
でもね。全部をニホンリスたちが使ってくれるわけではありません。
もちろん人気の巣箱と不人気の巣箱があります。人気の巣箱には、せっせと集めた古い巣材(杉の皮やシュロ)がぎゅうぎゅうに積もって地層のようになっています。またニホンリスは貯食行動をするのですが、巣箱がその貯食場になっていることもあります。
(貯食・・・冬などのエサが少ない時期に、土の中や木の洞などに餌を隠す行動)
利用頻度が高い人気の巣箱はどういった条件なのかはいまいち、分かっていません。
サイズなのか、高さなのか、位置なのか、ぐらつきなのか。
観察とデータを取り続けることで分かってくるような気もします。
▼昨年、人気だった巣箱の中身はこちら
さて、新しく作ってくれた巣箱をリスたちは使ってくれるのでしょうか?
次回、紹介します。お楽しみに。
(1枚も動物の写真がでてこないブログになってしまいました…笑)
動物専門員 あお
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2024年05月26日
動物専門員の日常#11 “リスと小鳥の森~繁殖に向けての取り組み①~”
みなさん、こんにちは。
春は過ぎ去り、初夏の季節がやってきました。
暖かすぎる日々が続きますね。
王子動物園で“春”といえば、桜の通り抜けが有名ですが
個人的にとっても待ち遠しかったことがあります。
それはニホンリスの恋のシーズンの到来です。
ニホンリスは名前の通り、日本国内だけに生息する固有種で本州・四国の平地から低い山を中心とした森林地帯に生息しています。
主に樹上で暮らし、昼間も活発に動きまわり冬眠期間はありません。
初春から夏にかけてはニホンリスたちにとっての恋のシーズンで1産あたり2~6仔を出産します。
王子動物園では“動物とこどもの国エリア”内にリスと小鳥の森があり、
そちらのエリアでニホンリスを飼育しています。
昨年“リスと小鳥の森”内の最も広いスペース(通称:森内エリア)で初めてニホンリスの営巣と繁殖を確認することができました(/・ω・)/
昨年、巣箱で産まれたときの写真がこちら▼
かわいすぎます!
今年も引き続き、ニホンリスの営巣と繁殖を目指すべく“リスと小鳥の森”を少しずつアップグレードしてきました。
「ああではないか」「やっぱりこうした方がいいのではないか」とみんなで悩みながら進めてきましたので
ブログで少しずつ紹介したいと思います。
お楽しみに~。
おまけ▼
この写真は“動物とこどもの国”エリアの約33年前のポスターです。
コアラ舎のスタッフ用の控え室に長い間、掲示されていたため色あせていますが
オープン当初のわくわくした感じが伝わってきます。
動物専門員 あお
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2024年05月15日
動物専門員の日常#10 カピバラ“アサヒ”の体重測定
“アサヒ”・“キリン”・“エビス”
2017年10月18日に王子動物園で誕生したカピバラの名前です。
当時、担当していた飼育員はお酒が大好きでビールシリーズで命名したらしいとか。
カピバラなのに“キリン”と名付けたことが当時、話題になったらしいとか。
担当になると今までの話をたくさん聞きます。
今日はその中のカピバラ“アサヒ”の話です。
さて、みなさん。カピバラ舎の奥のスペースに、“アサヒ”が暮らしているのをご存じでしょうか?
“アサヒ”は“チャーシュー”・“メンマ”と姉妹にあたるのですが、闘争が起こりお互いのパワーバランスが崩れたため、数年前より奥のスペースで単独飼育をしています。
“アサヒ”にとっても健康管理を進める上で体重を定期的に測定をすることは大切なことです。
しかし、“アサヒ”は飼育員泣かせの一面があります。
それは、性格がスーパーウルトラ繊細なのです (´;ω;`)ウッ…
飼育員が2~3m近くを通っただけでも、ひゅるっ~~~と逃げていきます。
暖かい季節になり、最近は展示場にトカゲがよく現れるようになったのですが、
そのトカゲの動きにびっくりして飛び跳ねていました。
(驚くポイントはそんな所にもあるのね・・・と私も驚きました(´・ω・))
初対面のときに、これは手強いぞ~と感じていたのですが、こちらもただ黙って見ているわけにはいきません。
粘り強く、体重測定のためのハズバンダリートレーニングに取り組むことにしました。
まずは、体重計に載せるオレンジ色の板に慣れてもらうこと(脱感作)からです。
“アサヒ”のスペースに早速、置いてみました。
ゆっくりと音を立てないように慎重にオレンジ色の板を置いてみたのですが
見知らぬものがあることに気づき、その場所を警戒して距離をとるようになりました。
慎重派の“アサヒ”らしい反応です。
負荷をかけすぎることなく、警戒心を解くために、最初は数時間、その次に半日、最後に1日中設置というステップを少しずつ進めていました。
その間、オレンジの板を覆い隠すように竹を置いてみたり(/・ω・)/
青草をまんべんなく、広げてみたり(-ω-)/
大好物のブドウを置いてみたり(´・ω・`)
少しずつ少しずつ、“アサヒ”の生活にこのオレンジ色の板の存在を慣らしていきました。
そんな日々が続いていたとき、急にオレンジの板の上に前肢を乗せて青草を食べてくれるようになりました。
とっても嬉しかったです。
喜びも束の間。
両前肢を乗せて食べてくれる所までは着実に進んだのですが
それから先の“後ろ肢を乗せ、完全に台の上に乗る”というステップの兆しが一向に見えず、
ここから、さらに時間がかかりました。
(見知らぬものの上に乗るのってそりゃ、怖いですよね・・・。)
その後、やっと(;_;)/~~~
“アサヒ”がオレンジ色の板に完全に乗って青草を食べてくれるようになりました。ここまで辿り着くのに約2か月かかりました。
“チャーシュー”、“メンマ”と同じように、“ハンドサインで体重計への乗り降りができたらいいのですが、“アサヒ”の繊細な性格や年齢、飼育管理の優先順位を考えるとまず必要なことは今の体重を知ることです。
そこで、こっそりとオレンジ色の板の下に体重計を入れ
いつも通り青草を置き、測定をしてみました。
「乗ってくれるかな・・・、どうかな~」とドキドキしていたのですが、
無事に乗ることができました(`・ω・´)ゞ
体重は48.1kg(5月地点)
餌量や投薬の調整に活かしていきたいです。
“アサヒ” よく頑張りました。
ありがとう。
動物専門員 あお
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2024年04月19日
動物専門員の日常#09“今日は飼育の日~謎すぎる生態 オオアリクイの鳴き声編~”
4月19日は語呂合わせで“飼育の日”(*‘∀‘)
公益社団法人日本動物園水族館協会が、飼育員の仕事を通して、動物園・水族館の動物を取り巻く仕事への理解を深めることを目的に2009年に定めました。
今日は飼育の日にちなみ、さまざまな園館で飼育体験やイベントが開催されていることだろうと思います。
飼育の仕事については過去のブログで3回に分けて紹介してますので、
ぜひ、ご覧くださいね(*’▽’)
▼こちらからどうぞ
・動物専門員の日常 #03 “振り返るとそこにはう・ん・ち”
・動物専門員の日常 #06 “動物たちへのエサやり~給餌編~”
さて、今日の本題です。
“飼育の日”にちなみ、オオアリクイの飼育をしている中で
私がとっっっても驚いたことを紹介します。
時を遡ること、数か月前の話。
担当になって、オオアリクイの日課作業を1人でできるようになった頃です。
オオアリクイのこと、そして当園で飼育している“サニー”と“ブンバ”のことを知るためにじっくりと観察したり、行動の記録をとってみたり、
先輩に過去のことを聞いたり、資料や文献を読んだり、時には他園館の担当者に聞いてみたりしてました。
“歯は生えておらず、舌のみを持つ動物なんだ!φ(・ω・)フム”
“え、意外にも泳げるのね(*’▽’)”
“今日はいつもより寝ているなぁ、なんでだろう。。。”など。
国内での飼育頭数も少なく、分からないことが多いオオアリクイの飼育と生態の魅力にすっかり惹かれていました。
そんなとき、ふとある疑問が浮かんだのです。
「オオアリクイって鳴くの?」
早速、先輩に聞いてみました。
「おう、ピヨピヨピヨと鳴くで。」
私「・・・・・え、嘘ですよね(´・ω・)」
当時、オオアリクイが“ピヨピヨピヨ”と鳴くと信じることができず、
真顔でそんな返事をしたような気がします。
滅多に鳴くことがないというオオアリクイ。
「担当し続けてたらいつか聞くと思うで~」と言われていたのですが、
鳴くそぶりはありませんでした。
そんなやりとりがあったことをすっかり忘れかけていたある朝。
先輩が言っていたように、本当に!!!!!!!
オオアリクイの“サニー”から鳥のさえずりのような声が聞こえてきたのです!!!!
(;゚Д゚) (;゚Д゚) (;゚Д゚)
“ピィヨ、ピヨ、ピヨ”
“ピィヨ”
▼そのときの動画がこちら
(※最初、画面が逆さになっています。ご了承ください。)
すぐに換気扇を消して、撮影したのですがほんのわずかな動画しか撮れませんでした。
これが、オオアリクイのサニーの鳴き声です。
まさかあの風貌から鳥が鳴くような声がでてくるなんて・・・!
衝撃でした!!!(;゚Д゚)
オオアリクイってとってもユニーク!
“鳴き声でお互いにコミュニケーションをとることはできるのだろうか?”
“鼻が長いからこそ出すことができる高さの音なのでは?”
“そもそもこれは本当に鳴き声と定義できるの?一体、どこから音が出てるの?”
“どういう条件で鳴くの?もしかして恋のシーズンと関係あるの?”
“幼獣と成獣で鳴き声は違うの?なぜ?” など。
謎は深まるばかりです。
動物たちの知られざる生態や生理を知ることができるのも、
その不思議な生態を解明する手がかりを見つけることができるのも、
飼育員の仕事の醍醐味のような気がします(/・ω・)/
分からないことが多いオオアリクイの魅力にますます惹き込まれていくのでした。
動物専門員 あお
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2024年03月24日
動物専門員の日常#08“カピバラ~体重測定ができるまで②”
みなさん、こんにちは。
カピバラの体重測定の続きの話です。
カピバラ~体重測定ができるまで①~でお知らせした通り、カピバラのチャーシューとメンマの体重測定に挑戦をしています。
まずは体重計の上にのせるオレンジの上板に慣れてもらうことが大切で、展示場に置いて2頭の様子を観察することにしました。
1か月程過ぎ、だいぶ慣れてきたころから本格的にハズバンダリートレーニングをスタートさせました。
オレンジの上板への脱感作がクリアできたとはいえ、すんなり台に乗ってくれることはありません。
このときの私にできることと言えば、根気よく待つことと観察をしながら、ハズバンダリートレーニングを日々、重ねていくことです。
メンマは少し繊細な性格で、乗る際にほんの少しでも板が傾くと驚き、離れていくことが多かったです。
ぐらつかないように板を押さえながら心の中で何万回も「大丈夫、怖くないよ」と言っていたような気がします。
THE・忍耐。
恐る恐る踏み出していた一歩が、日々のトレーニングを重ねるごとにはっきりとした一歩に変わっていきます。
両前肢が乗り、後肢も乗り、台の上で“座る”、台からおりるができるようになるまで小さな進歩がとても楽しみでした。
さて、そんなこんなでやっと、計測することができた2頭の体重は
チャーシュー49.9kg、メンマ52.0kg(3月時点)
2頭を見比べるとチャーシューは頭頂部(いわゆる顔の部分)が大きいので、メンマと比較して体重が重いのではないかと思っていましたが実際は逆でした。
目方だけでは分からないですね。
ハズバンダリートレーニングは動物園や水族館で野生動物の健康管理のために広まったトレーニング方法です。
一見すると簡単そうに見えますが、行動分析学などを踏まえながら動物たちが自主的にトレーニングに協力できるように進めていく必要があります。
ここまでなが~~い道のりでしたが、
これからも定期的に行い、動物たちの健康管理の一環に役立てたいです。
チャーシュー、メンマいつもありがとう。
動物専門員 あお
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2024年03月20日
動物専門員の日常#07“カピバラ~体重測定ができるまで①”
みなさん、こんにちは。
今日は、カピバラのお話です。
王子動物園には2つの場所でカピバラを飼育しています。
1つは動物とこどもの国エリアの“パピコ”・“モナカ”チームともう1つは、オオアリクイのすぐ隣に位置しているカピバラたち“チャーシュー”・“メンマ”・“アサヒ”チームです。
“チャーシュー”・“メンマ”の体重測定について紹介します。
健康管理に欠かせないのが体重測定です。体重が分かることによって、日々の餌の量の調整や病気になったときの投薬量の計算にも役に立ちます。
無理やり捕まえて体重測定をしたり、追いかけて測定台に乗ってもらうこともできますが、それではストレスになったり、逆にケガを引き起こし、体調を心配することになります。
“チャーシュー”と“メンマ”は人(飼育員)としっかりとコミュニケーションがとれるタイプ&過去にトレーニングを実施していた時期もあったため、少し前から体重測定のためのハズバンダリートレーニングを本格的に実施することにしました。
ハズバンダリートレーニングについて聞きなじみのある方、多いのではないでしょうか?健康管理のため、王子動物園ではジャイアントパンダの“タンタン”をはじめ、さまざまな動物種で取り入れられている方法です。日本語で直訳すると、受診動作訓練(じゅしんどうさくんれん)。動物を長期間にわたり健康的に、なおかつ動物も人も安全性に飼育するためのトレーニング方法です。
トレーニングを始める前に、まずは、体重計の上に置くオレンジ色の板が怖いものではなく、安全なものだと知ってもらうために数か月の間、運動場に置いてみました。
はじめましてのときはこんな感じ。興味深々で近づいてきてくれてます。
次に、餌(青草と竹)を台の上に置いて食べてもらうことにしました。
あまり警戒せずに食べてくれています。いい感じです。
動物たちは初めて見るものは恐怖心を感じやすいので徐々に慣らし、普段の暮らしの中で無視できるようにしていくことが必要になります。
これを少し専門的な言葉で“脱感作(だつかんさ)”といいます。
今回は既に展示場に設置してある板と同じ色・サイズにしたのでスムーズに進むことができました。
ある朝の様子です。餌を食べ終わった後、“チャーシュー”がくつろいでウトウトとしていました。「めちゃくちゃ、慣れてくれてるやん・・・!ヽ(。・ω・)ノ゛」
これには、思わず笑ってしまいました。
さて、ここから少しずつトレーニングを行っていきます。
今は既に2頭とも、順番に台の上に乗るトレーニングが完成しているのですがそれまでいろいろとあったので次回、ご紹介します。
お楽しみに。
動物専門員 あお
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2024年03月13日
動物専門員の日常 #06 “動物たちへのエサやり~給餌編~”
こんにちは。動物を飼育する上で大切な“3つのじ”の紹介シリーズ、掃除編・調餌編と続き、最後に給餌(きゅうじ)の紹介をしたいと思います。
給餌…餌やりのことで、この仕事が1番イメージしやすいかもしれません。
給餌の方法は動物種の生態や生理、個体の性格や群れのパワーバランスなどに合わせて決めていくので、様々なバリエーションがあります。
例えば、カルフォルニアアシカのように飼育員の手から餌を与える方法やカピバラのように展示場に竹などの餌を常に置いておき、
動物が好きなタイミングで食べる方法、小猿舎のサルたちのように寝室へ設置し、収容作業のときに誘導する方法などあります。
今日は、小猿舎のワオキツネザルの給餌を紹介したいと思います。
餌がこちら。調餌編で準備した野菜や果物です。
食べている様子がこちら。
よくみると、トレイの中から選んで食べているのが分かりますか?
種の生態や個体の性格、群れのパワーバランスにも寄りますが、好きなものから先に選んで食べることが多いです。
準備した餌(野菜や果物)を目の前で食べてくれるのはとても嬉しいです。給餌の時間は、近くで動物がきてくれるのでケガがないか、餌をとりに来てくれているか、きちんと食べることができているのか、残餌はどのぐらいなのかなどを観察できるチャンスでもあります。
掃除編でも紹介した通り、まずはいつも通りの状態を知ることがとっても大切。日々、試行錯誤をしながら掃除⇔調餌⇔給餌を行っています。
さて、3つのシリーズに渡り、飼育員のお仕事の基本(3つのじ)の紹介しました。みなさん、いかがでしたか?(*・ω・)ノ
私はこの“3つのじ”を初めて知ったときに、
まるで、“焼き鳥屋の秘伝のタレ”をつくるような仕事だと思いました。
継ぎ足し、継ぎ足しながら美味しいタレが少しずつ出来上がっていくように、飼育の仕事も動物たちにとって最善な環境は何か、動物園や水族館は来園者にとってどうあるべきなのかを考えつづけ、積み重ね、積み重ねながら駒を1つずつ進めていくようだと。
この他にも、獣舎環境の整備や獣医チームと連携しながらの病気の治療、動物福祉や繁殖への取り組み、ハズバンダリートレーニングや環境エンリッチメント、調査研究活動、ガイド・イベント講演やSDGsの活動など紹介したいことがたくさんありますので、またブログで紹介しますね((((((っ・ω・)っ ブーン
動物専門員 あお
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