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2024年09月23日
アムールトラ「レーニャ」
レーニャは2017年にドイツで生まれて2019年に王子動物園に搬入されました。
ドイツでは牛肉以外にもヤギやヒツジの家畜も与えていたそうです。
レーニャは搬入当日輸送箱から直ぐに寝室に移り、そのまま寝はじめるという落ち着いた様子でした。次の日から馬肉も食べはじめました。
1ヶ月ほどたち放飼場の扉を開けると、5分ほどで出ていきました。人を見ると威嚇してきましたが、人がいなくなると落ち着いていました。
しかし寝室に収容しようとしても帰って来ませんでした。次の日入れようとしていた扉とは別の扉から収容することが出来ました。それ以来オス用として使うはずだった部屋をレーニャが使っています。
2019年の映像
2020年映像
最近のレーニャは忙しい様です。そのわけは隣りの獣舎にボブキャットのソラが来たからです。
いつもはのんびりしていることが多いレーニャですが、ソラを初めて放飼場に出したときは、13:00のショウヘイとの入れ替えの時にソラが気になり帰って来ませんでした。そのため一度ソラを寝室に収容することで諦めて帰ってきました。
一方のソラはあまりトラを気にしている感じはしません。
オスのショウヘイもレーニャほどソラに関心はないようです。
レーニャにとっては隠れたり忍び寄ったりと、いいエンリッチメントになっているようです。ちなみにソラは前担当者を見つけると寄って行きますが、私には寄って来ません。もう少しだけソラとの距離を縮めたいものです。
やん
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2024年03月20日
ゾウ舎にて、その後
以前ゾウ舎の寝室にウッドチップを入れた話をしました。
今回はその後です。マックですがウッドチップを入れる前は夜間に1~2回、座り込んで休む時がありました。
それでも1~2分で立ち上がってしまうため、休んでいるとは言えない状態でした。ウッドチップを入れてからは座り込む時間が6~7分と延びました。
そして3週間ほどたつと、座った状態から前肢を伸ばし伏せる様な状態で休む様になりました。
休んでいる時間も長いときは20分を超えます。
一晩に2度伏せて休む時もあります。
これはかなりの足の負担軽減になっていると思います。
足が疲れて壁にもたれかかって休む時間も少し短くなりました。グラウンドに入れた川砂と寝室に入れたウッドチップで、足への負担が減れば、動物福祉の面からも良かったと考えられます。
これからも動物のことを考えて、色々な改善をしていきたいと思います。やん
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2024年01月17日
マックの牙
はじめにゾウの牙の話から。トラなどの猛獣の牙は犬歯ですがゾウの牙は門歯、すなわち前歯が進化したものです。その牙を使って木の皮をはいで食べたり、穴を掘って水を飲んだり、オスゾウは闘争に使います。
オスゾウの長い牙は見た目はいいですが、当のマックは重い牙が少し邪魔かもしれません。でも鼻を乗せて休めるので便利かも。飼育係には交差した長い牙のため鼻を振り上げて威嚇出来ないので少し安全です。飼育係はマックの鼻の届かない所を歩きますが、あの巨体が走ってきて鼻を振り上げられたらかなりの迫力です。仕事中ゾウの前を歩くだけの事ですが集中していないと、ふらりと近寄っただけで事故に繋がります。そのため飼育係はいつも緊張感を持って作業にあたっています。
牙は時々折れる事があります。気が付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、先日、マックの左牙の先が20cm程欠けました。遊具の丸太の所に牙の破片が落ちていたので、遊んでいて欠けたものと思われます。
欠けた所が牙の内側なので先が尖らなくて良かったです。なぜならズゼと同居した時にズゼの体に傷を付ける事があるからです。また根本から折れてしまった場合、歯髄が露出しても、直接触れられないマックの治療は思い通り出来ません。
マックは今までに何度か牙を折っています。2016年11月、ゾウ舎では放飼場の仕切り柵の工事をしていました。そのため2頭は昼間は同じパドックで過ごし、夜もいつもは1頭1室の寝室を2頭で一緒に居ました。夜中にマックがズゼの体を牙で押し出しました。余りにも力強く牙の中心部分で押したため折れてしまいました。監視カメラに音は入っていませんが、パーンと音が聞こえた気がしました。ショックだったのか牙を折ったマックは大人しく朝を迎えました。
そんな一面を持つマックですが、長い牙で大きなタイヤを持ち上げている姿は勇ましく、迫力ある遊びっぷりをこれからも見せてもらいたいです。
やん -
2023年10月26日
ゾウ舎にて
ゾウの寝室に細かいウッドチップを入れました。
硬い床にウッドチップを敷く事は動物福祉の観点からも良いことです。
マックは立ったまま寝るので足の負担軽減に、ズゼには硬いコンクリートの上ではなく、柔らかいウッドチップの上で寝てもらおうと考えたものです。
他園でもウッドチップを敷くことで睡眠時間が伸びたという報告もあります。
足のためには全面に敷いたほうがいいのですが、汚れた所を捨てるため入れ替える量が多くなります。
その結果、ズゼは睡眠中に横になる回数(ゾウは横になると自分の体重で内臓が圧迫されて血行が悪くなるため、一度起き上がり次は反対側を下にして横になります。)が2回から3回に増え、1日の睡眠時間も1時間程伸びました。
マックはいつも立ったまま寝ていますが、時折りウッドチップの上で座り込む様子が見られるようになりました。
2頭とも気持ち良さそうにウッドチップを浴びています。飼育係の作業時間は伸びましたが、2頭が喜んでくれるならみんな納得です。
やん
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2023年05月18日
アムールヒョウのスク
アムールヒョウの「スク」(メス)は2019年7月29日、「セイラ」の仔としてオス1頭、メス2頭で生まれたうちの1頭です。
「スク」(メス)、「ラム」(メス)、「トライ」(オス)の3頭です。
母親のセイラが育児をしなかったため人工哺育で育ちました。本来は母親が育てることが自然ですが、ネコ科の人工哺育をした事がなかったのでいい経験になりました。
スクが生後8ヶ月頃、小さく切った馬肉を与えているとき、こんな事がありました。
放飼場で3頭を遊ばせた後、寝室に戻し餌を食べさせていたのですが、トライが体も大きく、自分の分を食べ終わるとスクの餌を取りに行きました。
スクは取られまいと急いで食べてしまい、肉を喉に詰まらせてしまいました。
えずきだし、肉を吐き出しましたが、その後倒れて動かなくなってしまいました。
獣医さんを呼んでいる時間も無いので、急いで中に入り、口の中を見ると肉が見えたので取り出しました。
心臓マッサージと人工呼吸をすると20秒程で呼吸をしだしました。
それからしばらくはトライと分けて餌を食べさせました。
足を痛めて治療したこともあり、今でも人に対して甘えてくるときもあります。
野生のアムールヒョウは開発による生息地の分断、それによる近親交配による成長や繫殖の障害、毛皮目的の密猟等により、生息数は100頭程とも言われています。
生息地を守るとともに、アムールヒョウという亜種を絶やさないように世界ぐるみで飼育、繫殖させていかなければなりません。
トライは2020年6月30日によこはま動物園ズーラシアへ、ラムは2020年12月23日に福山市立動物園へ移動しました。
いずれスクも移動し、新しい命を繋いでいってくれることを願います。
やん
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2023年03月31日
頼もしい仲間たち
動物園の飼育係には様々な職員がいます。
いずれも神戸市の職員ですが、いわゆる正規の職員、最長3年の会計年度任用職員、飼育と調査研究を行う動物専門員が日々の飼育を行います。
その中で今回は会計年度任用職員について話したいと思います。
会計年度任用職員、分かりやすく言うと短期のアルバイトですが、誰でもできるわけではありません。
「高等学校や専門学校、大学等で動物に関する専門課程を修了した者又は修了見込みの者」となっています。
他園で飼育係をしていた人もいます。
私から見た彼ら彼女たちは、仕事に対して行動力があり、来園者に対して動物ガイドをし、平均年齢の高い職場を盛り上げてくれる、頼もしい仲間たちです。
その中のひとり、廣瀬さんからメッセージをもらったので紹介します。
皆さんこんにちは、北園の動物を担当している廣瀬です。
埼玉から来ました。
以前は東京の水族館で生物の解説をし、千葉県の動物園でポニーやハクビシンなどを担当していました。
そこから突然神戸まで来たので、随分思い切ったものだと思います。
王子動物園で初めてキリンやカバ、ホッキョクグマなどの動物と関わることになりました。
どこの動物園でも見られる動物ではないので、これだけでも王子動物園に来てよかった、ありがたいなと思いながら仕事をしています。
でも一番可愛がっているのはロバたちだったりして。
せっかく様々な動物たちの担当になれましたので、皆さんにもっと動物たちの魅力が伝えられる様頑張りたいと思います。
ひろせ
この動画は、廣瀬さんが消防ホースから作ったエンリッチメントアイテム(フィーダー)で、今のところツキノワグマのタケが遊んでいます。夢中になっていますね。
今後も持ち前の探求心を活かして、動物たちのために頑張って欲しいです。
やん
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2023年01月16日
エゾヒグマのロクジの移動について
エゾヒグマのロクジは、去年より、後肢の衰えが見られるようになりました。
初めは後肢のつまずきが見られ、次第につまずいた後肢が踏ん張れず腰を落とすようになりました。
投薬を始めるも症状の悪化が進み、投薬の量が増えていきました。それでもロクジは日の当たる2階部分に上がって行きます。
もし坂の途中でよろめいて下に落ちて怪我をしても助けに行けません。そのため、クマ舎の北側にある段差の少ない獣舎に移動する事にしました。
ロクジの移動 (動画)
当日は麻酔をかけて移動用のゲージに入れ、クレーンで移動先の放飼場に下ろしました。
麻酔から覚めているものの、後肢に力が入らず、ゲージから出るのに時間がかかりました。
ぱくぱく (動画)
翌日から餌も食べだし、足の様子を見ながら外に出るようになりました。
でも今は立ち上がっても後肢を前に出せない時もあり、前肢だけで移動するときもあります。
足を引きずった時に傷ができないように寝室の床にはゴムマットを敷いています。
放飼場にも園内で集めた落ち葉を入れました。
運動量も減っているので、足の負担軽減のためにダイエットも始めました。
少しでもロクジが快適に生きていけるように色々と考えていきます。
ちなみにサトエですが、ロクジが居なくなり少し寂しそうです。
少しでも気を紛らわしてもらおうと色々放飼場に入れています。
今は少しは慣れてきたみたいです。
やん
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2022年11月25日
こんなことも
動物園の飼育係は掃除、餌やり以外にこんな事をしているという紹介をしたいと思います。
動物園の役割の中に調査、研究があります。飼育をして分かった事、経験した事、疑問などそれを他園と共有することが大切です。その場が近畿ブロック技術者研修会や全国技術者研究会です。種ごとに分かれたレッサーパンダ会議、ゾウ会議などもあります。
私は先日担当であるホッキョクグマの計画推進会議に参加するため、愛媛県立とべ動物園に行ってきました。
全国のホッキョクグマ飼育園館の飼育係や獣医師が集まり、現状報告や今後の課題点などを話し合います。
近年は新型コロナウイルスの感染予防のためリモートが多くなっていますが、対面の会議はリモートでは聞きにくい小さな事やホッキョクグマ以外の動物のことなど色々聞けます。会議が終われば情報交換会でその続きをします。日付けが変わっても、ホテルの部屋で話をする人たちもいます。
2日目は会議の続きをして、園内見学をします。ホッキョクグマ舎以外にも他に担当している動物舎なども案内してもらえます。
新しい知識、飼育方法のアイデアなど色々刺激を受けます。それを持ち帰り王子動物園に生かせられるようにしていきたいです。
やん
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