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2024年06月05日
動物専門員の日常#12 “リスと小鳥の森~繁殖に向けての取り組み②~”
リスと小鳥の森~繁殖に向けての取り組み~の続きの話です。リス担当に新しく与えられたミッションは“ニホンリスたちが安心して出産・子育てができる環境を整えること”でした。
ニホンリスは繁殖や休息・ねぐら用に樹上で小枝を組んだ球状巣を作ったり、樹洞を利用します。
“リスと小鳥の森”でも球状巣がつくられることはあったのですが、残念ながらそこで繁殖や子育てをすることは今までありませんでした。
▼樹上につくられた球状巣
これまでの歴代リス担当の経験則から、リスたちが安心して出産や子育てできるようにサポートした方がいいのではないか、もっと背の高い場所に安定した巣箱があった方がいいのではないか、との考えがありましたので、巣箱を増設することになりました。
もちろん、巣箱は飼育員の手作りです(/・ω・)/みんなで頑張りました。▼完成した巣箱はこちら
最初は1つ作るのに30~40分ほどかかっていたのですが、作り続けることでどんどん、どんどんスピードアップをしていきました。
恋のシーズンが始まる春までに完成させたいという想いもありましたので、昨年の秋~冬頃は来る日も来る日も私は巣箱をつくっていたような気がします。
▼設置した様子がこちら(おー!圧巻!ちょっと嬉しいです!!)背の高いところでも巣箱がぐらつかないように足場は増設工事してもらいました。
結果、総勢74個の巣箱があります(`・ω・´)ゞ
でもね。全部をニホンリスたちが使ってくれるわけではありません。
もちろん人気の巣箱と不人気の巣箱があります。人気の巣箱には、せっせと集めた古い巣材(杉の皮やシュロ)がぎゅうぎゅうに積もって地層のようになっています。またニホンリスは貯食行動をするのですが、巣箱がその貯食場になっていることもあります。
(貯食・・・冬などのエサが少ない時期に、土の中や木の洞などに餌を隠す行動)
利用頻度が高い人気の巣箱はどういった条件なのかはいまいち、分かっていません。
サイズなのか、高さなのか、位置なのか、ぐらつきなのか。
観察とデータを取り続けることで分かってくるような気もします。
▼昨年、人気だった巣箱の中身はこちら
さて、新しく作ってくれた巣箱をリスたちは使ってくれるのでしょうか?
次回、紹介します。お楽しみに。
(1枚も動物の写真がでてこないブログになってしまいました…笑)
動物専門員 あお
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2024年05月26日
動物専門員の日常#11 “リスと小鳥の森~繁殖に向けての取り組み①~”
みなさん、こんにちは。
春は過ぎ去り、初夏の季節がやってきました。
暖かすぎる日々が続きますね。
王子動物園で“春”といえば、桜の通り抜けが有名ですが
個人的にとっても待ち遠しかったことがあります。
それはニホンリスの恋のシーズンの到来です。
ニホンリスは名前の通り、日本国内だけに生息する固有種で本州・四国の平地から低い山を中心とした森林地帯に生息しています。
主に樹上で暮らし、昼間も活発に動きまわり冬眠期間はありません。
初春から夏にかけてはニホンリスたちにとっての恋のシーズンで1産あたり2~6仔を出産します。
王子動物園では“動物とこどもの国エリア”内にリスと小鳥の森があり、
そちらのエリアでニホンリスを飼育しています。
昨年“リスと小鳥の森”内の最も広いスペース(通称:森内エリア)で初めてニホンリスの営巣と繁殖を確認することができました(/・ω・)/
昨年、巣箱で産まれたときの写真がこちら▼
かわいすぎます!
今年も引き続き、ニホンリスの営巣と繁殖を目指すべく“リスと小鳥の森”を少しずつアップグレードしてきました。
「ああではないか」「やっぱりこうした方がいいのではないか」とみんなで悩みながら進めてきましたので
ブログで少しずつ紹介したいと思います。
お楽しみに~。
おまけ▼
この写真は“動物とこどもの国”エリアの約33年前のポスターです。
コアラ舎のスタッフ用の控え室に長い間、掲示されていたため色あせていますが
オープン当初のわくわくした感じが伝わってきます。
動物専門員 あお
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2024年05月15日
動物専門員の日常#10 カピバラ“アサヒ”の体重測定
“アサヒ”・“キリン”・“エビス”
2017年10月18日に王子動物園で誕生したカピバラの名前です。
当時、担当していた飼育員はお酒が大好きでビールシリーズで命名したらしいとか。
カピバラなのに“キリン”と名付けたことが当時、話題になったらしいとか。
担当になると今までの話をたくさん聞きます。
今日はその中のカピバラ“アサヒ”の話です。
さて、みなさん。カピバラ舎の奥のスペースに、“アサヒ”が暮らしているのをご存じでしょうか?
“アサヒ”は“チャーシュー”・“メンマ”と姉妹にあたるのですが、闘争が起こりお互いのパワーバランスが崩れたため、数年前より奥のスペースで単独飼育をしています。
“アサヒ”にとっても健康管理を進める上で体重を定期的に測定をすることは大切なことです。
しかし、“アサヒ”は飼育員泣かせの一面があります。
それは、性格がスーパーウルトラ繊細なのです (´;ω;`)ウッ…
飼育員が2~3m近くを通っただけでも、ひゅるっ~~~と逃げていきます。
暖かい季節になり、最近は展示場にトカゲがよく現れるようになったのですが、
そのトカゲの動きにびっくりして飛び跳ねていました。
(驚くポイントはそんな所にもあるのね・・・と私も驚きました(´・ω・))
初対面のときに、これは手強いぞ~と感じていたのですが、こちらもただ黙って見ているわけにはいきません。
粘り強く、体重測定のためのハズバンダリートレーニングに取り組むことにしました。
まずは、体重計に載せるオレンジ色の板に慣れてもらうこと(脱感作)からです。
“アサヒ”のスペースに早速、置いてみました。
ゆっくりと音を立てないように慎重にオレンジ色の板を置いてみたのですが
見知らぬものがあることに気づき、その場所を警戒して距離をとるようになりました。
慎重派の“アサヒ”らしい反応です。
負荷をかけすぎることなく、警戒心を解くために、最初は数時間、その次に半日、最後に1日中設置というステップを少しずつ進めていました。
その間、オレンジの板を覆い隠すように竹を置いてみたり(/・ω・)/
青草をまんべんなく、広げてみたり(-ω-)/
大好物のブドウを置いてみたり(´・ω・`)
少しずつ少しずつ、“アサヒ”の生活にこのオレンジ色の板の存在を慣らしていきました。
そんな日々が続いていたとき、急にオレンジの板の上に前肢を乗せて青草を食べてくれるようになりました。
とっても嬉しかったです。
喜びも束の間。
両前肢を乗せて食べてくれる所までは着実に進んだのですが
それから先の“後ろ肢を乗せ、完全に台の上に乗る”というステップの兆しが一向に見えず、
ここから、さらに時間がかかりました。
(見知らぬものの上に乗るのってそりゃ、怖いですよね・・・。)
その後、やっと(;_;)/~~~
“アサヒ”がオレンジ色の板に完全に乗って青草を食べてくれるようになりました。ここまで辿り着くのに約2か月かかりました。
“チャーシュー”、“メンマ”と同じように、“ハンドサインで体重計への乗り降りができたらいいのですが、“アサヒ”の繊細な性格や年齢、飼育管理の優先順位を考えるとまず必要なことは今の体重を知ることです。
そこで、こっそりとオレンジ色の板の下に体重計を入れ
いつも通り青草を置き、測定をしてみました。
「乗ってくれるかな・・・、どうかな~」とドキドキしていたのですが、
無事に乗ることができました(`・ω・´)ゞ
体重は48.1kg(5月地点)
餌量や投薬の調整に活かしていきたいです。
“アサヒ” よく頑張りました。
ありがとう。
動物専門員 あお
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2024年04月19日
動物専門員の日常#09“今日は飼育の日~謎すぎる生態 オオアリクイの鳴き声編~”
4月19日は語呂合わせで“飼育の日”(*‘∀‘)
公益社団法人日本動物園水族館協会が、飼育員の仕事を通して、動物園・水族館の動物を取り巻く仕事への理解を深めることを目的に2009年に定めました。
今日は飼育の日にちなみ、さまざまな園館で飼育体験やイベントが開催されていることだろうと思います。
飼育の仕事については過去のブログで3回に分けて紹介してますので、
ぜひ、ご覧くださいね(*’▽’)
▼こちらからどうぞ
・動物専門員の日常 #03 “振り返るとそこにはう・ん・ち”
・動物専門員の日常 #06 “動物たちへのエサやり~給餌編~”
さて、今日の本題です。
“飼育の日”にちなみ、オオアリクイの飼育をしている中で
私がとっっっても驚いたことを紹介します。
時を遡ること、数か月前の話。
担当になって、オオアリクイの日課作業を1人でできるようになった頃です。
オオアリクイのこと、そして当園で飼育している“サニー”と“ブンバ”のことを知るためにじっくりと観察したり、行動の記録をとってみたり、
先輩に過去のことを聞いたり、資料や文献を読んだり、時には他園館の担当者に聞いてみたりしてました。
“歯は生えておらず、舌のみを持つ動物なんだ!φ(・ω・)フム”
“え、意外にも泳げるのね(*’▽’)”
“今日はいつもより寝ているなぁ、なんでだろう。。。”など。
国内での飼育頭数も少なく、分からないことが多いオオアリクイの飼育と生態の魅力にすっかり惹かれていました。
そんなとき、ふとある疑問が浮かんだのです。
「オオアリクイって鳴くの?」
早速、先輩に聞いてみました。
「おう、ピヨピヨピヨと鳴くで。」
私「・・・・・え、嘘ですよね(´・ω・)」
当時、オオアリクイが“ピヨピヨピヨ”と鳴くと信じることができず、
真顔でそんな返事をしたような気がします。
滅多に鳴くことがないというオオアリクイ。
「担当し続けてたらいつか聞くと思うで~」と言われていたのですが、
鳴くそぶりはありませんでした。
そんなやりとりがあったことをすっかり忘れかけていたある朝。
先輩が言っていたように、本当に!!!!!!!
オオアリクイの“サニー”から鳥のさえずりのような声が聞こえてきたのです!!!!
(;゚Д゚) (;゚Д゚) (;゚Д゚)
“ピィヨ、ピヨ、ピヨ”
“ピィヨ”
▼そのときの動画がこちら
(※最初、画面が逆さになっています。ご了承ください。)
すぐに換気扇を消して、撮影したのですがほんのわずかな動画しか撮れませんでした。
これが、オオアリクイのサニーの鳴き声です。
まさかあの風貌から鳥が鳴くような声がでてくるなんて・・・!
衝撃でした!!!(;゚Д゚)
オオアリクイってとってもユニーク!
“鳴き声でお互いにコミュニケーションをとることはできるのだろうか?”
“鼻が長いからこそ出すことができる高さの音なのでは?”
“そもそもこれは本当に鳴き声と定義できるの?一体、どこから音が出てるの?”
“どういう条件で鳴くの?もしかして恋のシーズンと関係あるの?”
“幼獣と成獣で鳴き声は違うの?なぜ?” など。
謎は深まるばかりです。
動物たちの知られざる生態や生理を知ることができるのも、
その不思議な生態を解明する手がかりを見つけることができるのも、
飼育員の仕事の醍醐味のような気がします(/・ω・)/
分からないことが多いオオアリクイの魅力にますます惹き込まれていくのでした。
動物専門員 あお
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2024年03月24日
動物専門員の日常#08“カピバラ~体重測定ができるまで②”
みなさん、こんにちは。
カピバラの体重測定の続きの話です。
カピバラ~体重測定ができるまで①~でお知らせした通り、カピバラのチャーシューとメンマの体重測定に挑戦をしています。
まずは体重計の上にのせるオレンジの上板に慣れてもらうことが大切で、展示場に置いて2頭の様子を観察することにしました。
1か月程過ぎ、だいぶ慣れてきたころから本格的にハズバンダリートレーニングをスタートさせました。
オレンジの上板への脱感作がクリアできたとはいえ、すんなり台に乗ってくれることはありません。
このときの私にできることと言えば、根気よく待つことと観察をしながら、ハズバンダリートレーニングを日々、重ねていくことです。
メンマは少し繊細な性格で、乗る際にほんの少しでも板が傾くと驚き、離れていくことが多かったです。
ぐらつかないように板を押さえながら心の中で何万回も「大丈夫、怖くないよ」と言っていたような気がします。
THE・忍耐。
恐る恐る踏み出していた一歩が、日々のトレーニングを重ねるごとにはっきりとした一歩に変わっていきます。
両前肢が乗り、後肢も乗り、台の上で“座る”、台からおりるができるようになるまで小さな進歩がとても楽しみでした。
さて、そんなこんなでやっと、計測することができた2頭の体重は
チャーシュー49.9kg、メンマ52.0kg(3月時点)
2頭を見比べるとチャーシューは頭頂部(いわゆる顔の部分)が大きいので、メンマと比較して体重が重いのではないかと思っていましたが実際は逆でした。
目方だけでは分からないですね。
ハズバンダリートレーニングは動物園や水族館で野生動物の健康管理のために広まったトレーニング方法です。
一見すると簡単そうに見えますが、行動分析学などを踏まえながら動物たちが自主的にトレーニングに協力できるように進めていく必要があります。
ここまでなが~~い道のりでしたが、
これからも定期的に行い、動物たちの健康管理の一環に役立てたいです。
チャーシュー、メンマいつもありがとう。
動物専門員 あお
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2024年03月20日
動物専門員の日常#07“カピバラ~体重測定ができるまで①”
みなさん、こんにちは。
今日は、カピバラのお話です。
王子動物園には2つの場所でカピバラを飼育しています。
1つは動物とこどもの国エリアの“パピコ”・“モナカ”チームともう1つは、オオアリクイのすぐ隣に位置しているカピバラたち“チャーシュー”・“メンマ”・“アサヒ”チームです。
“チャーシュー”・“メンマ”の体重測定について紹介します。
健康管理に欠かせないのが体重測定です。体重が分かることによって、日々の餌の量の調整や病気になったときの投薬量の計算にも役に立ちます。
無理やり捕まえて体重測定をしたり、追いかけて測定台に乗ってもらうこともできますが、それではストレスになったり、逆にケガを引き起こし、体調を心配することになります。
“チャーシュー”と“メンマ”は人(飼育員)としっかりとコミュニケーションがとれるタイプ&過去にトレーニングを実施していた時期もあったため、少し前から体重測定のためのハズバンダリートレーニングを本格的に実施することにしました。
ハズバンダリートレーニングについて聞きなじみのある方、多いのではないでしょうか?健康管理のため、王子動物園ではジャイアントパンダの“タンタン”をはじめ、さまざまな動物種で取り入れられている方法です。日本語で直訳すると、受診動作訓練(じゅしんどうさくんれん)。動物を長期間にわたり健康的に、なおかつ動物も人も安全性に飼育するためのトレーニング方法です。
トレーニングを始める前に、まずは、体重計の上に置くオレンジ色の板が怖いものではなく、安全なものだと知ってもらうために数か月の間、運動場に置いてみました。
はじめましてのときはこんな感じ。興味深々で近づいてきてくれてます。
次に、餌(青草と竹)を台の上に置いて食べてもらうことにしました。
あまり警戒せずに食べてくれています。いい感じです。
動物たちは初めて見るものは恐怖心を感じやすいので徐々に慣らし、普段の暮らしの中で無視できるようにしていくことが必要になります。
これを少し専門的な言葉で“脱感作(だつかんさ)”といいます。
今回は既に展示場に設置してある板と同じ色・サイズにしたのでスムーズに進むことができました。
ある朝の様子です。餌を食べ終わった後、“チャーシュー”がくつろいでウトウトとしていました。「めちゃくちゃ、慣れてくれてるやん・・・!ヽ(。・ω・)ノ゛」
これには、思わず笑ってしまいました。
さて、ここから少しずつトレーニングを行っていきます。
今は既に2頭とも、順番に台の上に乗るトレーニングが完成しているのですがそれまでいろいろとあったので次回、ご紹介します。
お楽しみに。
動物専門員 あお
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2024年03月13日
動物専門員の日常 #06 “動物たちへのエサやり~給餌編~”
こんにちは。動物を飼育する上で大切な“3つのじ”の紹介シリーズ、掃除編・調餌編と続き、最後に給餌(きゅうじ)の紹介をしたいと思います。
給餌…餌やりのことで、この仕事が1番イメージしやすいかもしれません。
給餌の方法は動物種の生態や生理、個体の性格や群れのパワーバランスなどに合わせて決めていくので、様々なバリエーションがあります。
例えば、カルフォルニアアシカのように飼育員の手から餌を与える方法やカピバラのように展示場に竹などの餌を常に置いておき、
動物が好きなタイミングで食べる方法、小猿舎のサルたちのように寝室へ設置し、収容作業のときに誘導する方法などあります。
今日は、小猿舎のワオキツネザルの給餌を紹介したいと思います。
餌がこちら。調餌編で準備した野菜や果物です。
食べている様子がこちら。
よくみると、トレイの中から選んで食べているのが分かりますか?
種の生態や個体の性格、群れのパワーバランスにも寄りますが、好きなものから先に選んで食べることが多いです。
準備した餌(野菜や果物)を目の前で食べてくれるのはとても嬉しいです。給餌の時間は、近くで動物がきてくれるのでケガがないか、餌をとりに来てくれているか、きちんと食べることができているのか、残餌はどのぐらいなのかなどを観察できるチャンスでもあります。
掃除編でも紹介した通り、まずはいつも通りの状態を知ることがとっても大切。日々、試行錯誤をしながら掃除⇔調餌⇔給餌を行っています。
さて、3つのシリーズに渡り、飼育員のお仕事の基本(3つのじ)の紹介しました。みなさん、いかがでしたか?(*・ω・)ノ
私はこの“3つのじ”を初めて知ったときに、
まるで、“焼き鳥屋の秘伝のタレ”をつくるような仕事だと思いました。
継ぎ足し、継ぎ足しながら美味しいタレが少しずつ出来上がっていくように、飼育の仕事も動物たちにとって最善な環境は何か、動物園や水族館は来園者にとってどうあるべきなのかを考えつづけ、積み重ね、積み重ねながら駒を1つずつ進めていくようだと。
この他にも、獣舎環境の整備や獣医チームと連携しながらの病気の治療、動物福祉や繁殖への取り組み、ハズバンダリートレーニングや環境エンリッチメント、調査研究活動、ガイド・イベント講演やSDGsの活動など紹介したいことがたくさんありますので、またブログで紹介しますね((((((っ・ω・)っ ブーン
動物専門員 あお
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2024年03月06日
動物専門員の日常 #05 “エサづくり~調餌編~”
みなさん、こんにちは(*・ω・)ノ久しぶりの投稿になりました。
動物を飼育する上で大切な3つのじ、今回は2つ目の紹介をしたいと思います。2つ目は、調餌(ちょうじ)・・・飼育動物たちの餌をつくること です。飼育員や動物専門員は毎日、動物たちのためにたくさんの餌を作っています。こちらは、王子動物園の調餌室、まるで大きなキッチンスタジオのようです。(ちなみにこの調餌室以外にもコンパクトな調餌スペースがある獣舎もあります)
今回は小猿舎の調餌の様子を紹介します。「複雑な小猿舎の調餌を最初にマスターしたら他の動物の調餌も基本的にはできるようになるよ」と先輩に教えてもらい、気合いが入ります。野菜や果物を切るだけと言われたら、簡単そうに聞こえますが、餌が大きすぎたり、小さすぎたりすると食べてくれなかったり、種類ごとに食べる餌が違ったりするので気を付けないといけないことがたくさんあります。
(当たり前のことかもしれませんが、)調餌をしてみると果物や野菜も生きものだなと心底、実感します。納品のときにチェックされており、とても品質のよい果物や野菜を準備してもらっているのですが、そのバリエーションは多様で、リンゴ1つとっても大きさや形、重さ、色合いなどもだいぶ、変わります。
下の写真の餌は小猿舎のフサオマキザルの大部屋(11頭分)に与える1日分の量です。
そして、調餌も終盤になった頃、忘れてはいけないのはこちら!
どどーんと、このボトルです。通称、白い粉(笑)
これは、カルシウムとビタミンで定期的に、最後にパラパラパラっとふりかけのようにかけます。なんだかとっても美味しそうじゃないですか?わたしだけ?
先輩たちが作ってくれた配合表を基本に餌を作っているのですが、個体によってそれぞれ嗜好性があり、日々そのバランスや量の見極めも必要になっています。バランスの良い餌を準備しても、量が多すぎたら嗜好性の高いものしか食べなくなってしまい、飼料の偏りが起きてしまいます。あくまでも、動物たちにとってはバランスの良い餌をまんべんなく食べてくれるのが理想の状態。調餌の仕事1つとっても、掃除、調餌、給餌と全て関連していて奥が深いのです。
では、今回のブログはこのあたりで!次回、給餌編では実際に餌を与える様子を紹介しますね。お楽しみに(`・ω・´)ゞ
動物専門員 あお
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2023年11月29日
動物専門員の日常 ♯04 “番外編 世界アリクイの日~World Anteater Day~”
こんにちは。11月29日は“いい肉の日”や“いい服の日”など記念日満載な日ですが、
実は“世界アリクイの日~World Anteater Day~”でもあります。“アリクイを取り巻く環境の現状を広く知っていただき、保全へと繋げたい”そんな願いを込めて、王子動物園で飼育しているオオアリクイを詳しく紹介したいと思います。
いきなりですが、オオアリクイの担当になって、私が最も聞かれる質問って何だと思いますか?答えは、「何食べているの?やっぱり蟻を食べているの?」です。
この質問、とっても多いです。みなさんのご想像の通り、野生下ではアリやシロアリを食べて生活をしています。60㎝にも達する舌を1分間に160回以上も出し入れして、1日約30,000~35,000匹を舐めとって食べると言われています。アリの巣を見つけるための発達した嗅覚は、なんと人間の約40倍と言われており、寝ている時間以外の活動時間のほとんどを採食に費やしています。ちなみに歯は持っておらず、ネバネバした舌には絡めとったアリを逃さないように後ろ向きの小さなトゲがついています。また大変強い前肢をもっており、前肢の第2・3指(人差し指と中指)に発達した鋭い爪を持ちます。この爪を使って蟻塚を崩したり、木の皮をめくったりします。アリやシロアリを食べるために特化した身体の作りになっている訳ですね。飼育下では、さすがに蟻を毎日、準備することができないので代用食として王子動物園では鶏ミンチ肉、食虫目ペレット、ヨーグルト、卵、粉ミルクをお湯でドロドロに溶かしたものを与えています。現在、オスのブンバ(静岡市立日本平動物園生まれ)とメスのサニー(名古屋市立東山動植物園生まれ)の2頭を飼育していますが、2020年5月に王子動物園へと来園した際は餌の調整(量や配分)が難しかったようです。
「最初は、餌食いが悪くてかなり苦労したよ~」と先輩に言われていたのですが、今では2頭とも1日2回もりもり食べてくれています。ちなみに、オスのブンバはなぜか寝ながら食べるスタイルです。私は初めて見たときに驚きました(笑)
そんなオスのブンバとメスのサニーですが、ペアリング計画が進行中です。オオアリクイ属は交尾以外、単独で生活する社会性を持たない動物です。慣れない個体同士が接触すると威嚇行動に出る場合もあり、まずはお互いが慣れることが必要でこれまでタイミングを見ながら同居を進めていました。今はまだ2頭の間には絶妙な距離間があり、ペアリング成功への道のりはまだまだ先のような気がします。じっくりと見守っていただけると嬉しいです。
最後に王子動物園がどうやって種の保存の一助になっているのかを紹介したいと思います。
種の保存というと、サニーとブンバのペアリング計画のように、“絶滅危惧種の繁殖”をイメージされる方も多いのではないでしょうか?もちろん、それも正しいことではありますがそれだけではありません。動物の展示を通じて、オオアリクイのこと自体とそして、その動物が置かれている環境を知ってもらうことも、とても大切です。そもそも、その動物自体を知らないと
何を助けなければならないのか、なぜ助けなければならないのか、分からないと思うのです。オオアリクイは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅のおそれのある野生動物のリスト、通称レッドリストにおいて絶滅危惧種(VU:危急)に分類されています。森林伐採や農地転用、高速道路の建設と言った生息地の分断化や縮小、スポーツハントによる乱獲、ペットなどの商用目的の密猟が原因で野生下では絶滅に近いと言われている動物でもあります。国内では現在、6園館17個体(2022年12月末地点)が飼育されており、それぞれの園館でペアリング計画が進行しております。ちなみに近畿地方でご覧いただけるのは、王子動物園だけとなります。
意外にオオアリクイが絶滅危惧種であることや国内での飼育頭数が17個体であり、ペアリング計画が進行していることなど知られていないと感じることが多いです。
「何食べているの?やっぱり蟻を食べているの?」
私はこの質問を頂く度に、オオアリクイのことをどこまで知っていただけるだろう。
野生下の環境の事もどこまで興味を持っていただけるだろうか。とワクワクします。
動物の飼育展示を通じて来園者の方にその動物に興味を持って頂くことが
種の保存への第一歩だと思っています。本日、11/29は“世界アリクイの日” \(^▽^*)当園のブンバとサニーを通じて、野生下のオオアリクイの現状にも興味を持っていただけると嬉しいです。
動物専門員 あお
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2023年09月27日
動物専門員の日常#03 “振り返るとそこにはう・ん・ち”
不定期連載の「動物専門員の日常」ブログ、第3回目です。
ゆる~い感じで、書き連ねますので、どうぞゆる~い気持ちでお付き合いくださいませ。
今日は飼育員のお仕事の基本「3つのじ」について紹介します。
「飼育員のお仕事ってどんなことをするの?」と聞かれたときに、必ず私がお答えするのがこの3つのじ、それぞれ掃除・調餌・給餌の3つの仕事の語尾をとったものです。
① 掃除・・・文字通り、獣舎や飼育環境の掃除をすること
② 調餌・・・飼育動物の餌をつくること
③ 給餌・・・飼育動物に餌を与えること
イメージしやすいのは餌を与えている飼育員の姿だと思いますが
1日の業務時間の内、大部分を占めているのは実は①掃除です!!
意外ですよね、私も動物園・水族館業界で働くまでは③給餌がメインだと思っていました。
飼育環境を衛生的に整える作業は飼育員や動物専門員にとって、動物たちの健康状態を知ることができる貴重な時間でもあります。
え?どうやって掃除の時間に健康状態を知るって?
それは、“う・ん・ち”です!(笑)
担当動物を1頭1頭、観察することはもちろんですが、うんちは健康のバロメーター‼
毎日の量、色、柔らかさ、匂いなどから腸内環境や健康状態をある程度、把握することができます。私たち、人間も一緒ですよね。
さらに、前日に与えた餌の食べ残しがどのぐらいあるのかも、掃除の時間に動物たちのことを知る貴重な時間です。
「うんちがいつもよりべちゃべちゃになっていたから、糞便検査にまわすね」
「うんちの中に血が混じっていたから、見ておいて」
「昨日は食べ残しがあったから、今日の配合量と組み合わせはこっちにしてみよう」など掃除の時間を中心に担当者同士、いろいろな会話が交わされています。
今の私は、担当動物たちのいつも通りの状態を知ることに精一杯。
もちろん、うんちも例外ではありません。
掃除の時間は、うんちのことで頭がいっぱいになります(笑)
そして、衛生環境を整えるために、獣舎の掃除をして前日のうんちは全て取り除かなければなりません。丁寧に獣舎を掃除したと思いきや、先輩にチェックしてもらったタイミングで意外なところに取り残されているうんちがあるのです。。。
苦戦している私の姿を見て「ホースで洗い流した度に必ず、振り返る癖をつけるべし!」
とアドバイスを貰ったので、掃除(ホースで洗い流す)→振り返る→掃除(ホースで洗い流す)→振り返る→掃除(ホースで洗い流す)→振り返るを繰り返しています。
アドバイス通り、振り返るとなぜかそこには取り残されたう・ん・ち!(笑)
1回の掃除で完璧にキレイにできるのは、もう少し先の話かもしれません。
先輩曰く「そのうち、うんちか模様か、パッと見ただけで分かる目になってくるよ~」とのこと。
目指せ!うんちが分かる目の獲得~!
次は3つのじ、調餌編についてご紹介します。
動物専門員 あお
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