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2024年01月18日
アビシニアコロブスの「バッコス」の死亡に寄せて
2024年1月12日、アビシニアコロブスの「バッコス」(オス、24歳)が亡くなりました。
前日もいつも通り家族とご飯を食べ、亡くなった当日も変わらず運動場に出ていたので、担当者としても突然のことで驚きを隠せません。
その後、死因について調査したところ、急性心不全が推定されました。バッコスは2009年に来園し、その後、2頭のメスの夫となり、2011年には、当園では5年半ぶりとなる子どもを授かりました。その後も子宝に恵まれ、8頭もの子どもを残し、今ではその子供たちも良き親になっています。
バッコスは群れの中ではリーダー役を担い、いつも1番に運動場へ出て安全を確認し、寝室に戻るときも、全頭が戻ってから寝室に帰るようにしていました。また、常に一歩下がったところから全体を見守り、時には子ども達と遊び、みんなに慕われる立派なリーダーでした。
バッコスの冥福をお祈りするとともに、これまで多くの方々に見に来ていただき、感謝申し上げます。
王子動物園 猿担当
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2024年01月08日
六甲山の自然 9 ニホンイノシシ
ニホンイノシシ Sus scrofa leucomystax
【分布】
二ホンイノシシ(以下、「イノシシ」とする)は、本州、四国、九州、淡路島などに分布しています。
イノシシの分布域は拡大傾向にあり、特に東北や北陸地方で分布域を拡大していると報告されています。イノシシは雪深いところでは生息できないと言われていました。しかし、暖冬による積雪量の減少によって北方へと分布域を拡大していると考えられています。また、五島列島や瀬戸内海の島にも分布域を拡大しており、イノシシが海を泳ぎ渡り移入したと推察されています。イノシシが増加していることも分布域を拡大している要因と考えられています。【形態】
中国山地の野生イノシシの雄の体重は50-150kg、頭胴長は110-160cmで、雌はこれよりも小さいと報告されています。イノシシは、鯨偶蹄目に分類され、蹄は 4 本で、歩行には第3指と第4指が使われます。第2指と第5指は副蹄と呼ばれ小さく退化しています。
副蹄(第2指と第5指)は地面から離れているため、堅い地面では写真のように足跡として残りません。
3ヶ月齢までの子イノシシは赤褐色で縞模様があり、うり坊と呼ばれています。 3 ヶ月齢をすぎるあたりから縞模様が薄くなり親と同じ色に変わり始めます。
【食性】
雑食性で植物質ではクズやヤマイモ、チガヤなどの根茎や各種の葉、果実、堅果など、動物質では昆虫類、 ミミズ、カエル、カニなどを食べると言われています。イノシシは、土の中の植物の根や石とか落ち葉などの下にいる昆虫やミミズなどを食べるために鼻で地面を掘り起こします。鼻の力は強く、 50~70 ㎏の物を動かすことがあると言われています。地面の掘り起こしはイノシシが生息している痕跡として最もわかりやすいものです。
飼育下のイノシシは人間が食べるものは、ほとんど好んで食べます。また動物質の嗜好性が高いと感じました。
ハンバーガーやポテトなど人間も好む匂いに強い興味を示します。このような食べ物を持ってイノシシの生息地に行かれるとイノシシをおびき寄せていることになるので非常に危険です。
【繁殖】
交尾期は12月から1月にかけて始まり、約3ケ月間続くと言われています。出産は通常春に行われますが、春の出産に失敗した場合や出産した子を失った場合は、交尾期と異なる時期に再度発情が起こり、秋頃に出産することがあるという報告があります。飼育下における調査では妊娠期間は113日~119日で平均117日でした。産仔数(1回の出産で産まれる子供の数)は、1~7頭で平均4.19頭、初産の産仔数の平均は3.36頭で経産(2回目以降の出産)の産仔数は4.47頭と統計的に有意な差が見られました。
出産時期は3月から6月までと7月から10月までの2峰性が認められ、それぞれの分布の中で4月と9月にピークが見られました。
狩猟および有害捕獲にて捕獲された野生個体の報告では、妊娠率は、0歳群8.8%、1歳群84.2%、2+歳群96.1%と算出され、イノシシでは0歳でも妊娠可能であること、2歳以上ではほぼ毎年妊娠していることが明らかにされています。このことからイノシシは非常に繁殖率の高い生き物であることがわかります。
【イノシシの被害】
イノシシによる食害はイネ、トウモロコシ、イモ類、ナス、大根、キャベツ、カボチャ、トマト、人参、白菜、キュウリ、スイカ、イチゴ、タケノコ、ミカン、リンゴ、ブドウ、カキ、モモ、ナシ、クリなど多くの野菜や果樹で発生しています。
六甲山系の市街地では、食害だけではなく、イノシシによる人身被害や交通事故、ゴミ荒らしなども発生しています。このため神戸市では2002年 5月 1日にイノシシヘの餌付けを禁止する条例「神戸市いのししの出没及びいのししからの危害の防止に関する条例」が施行されました。条例では、イノシシヘの餌付け行為と餌となりうるごみの放棄の禁止が定められています。西宮市でも 2013年 4月 1 日に、「西宮市いのしし餌やり禁止条例」が施行されました。
昔は六甲山に行くと必ず何頭ものイノシシに出くわしていましたが、最近ではイノシシに出くわすこともほとんどなくなりました。先日、出くわしたイノシシも私に気づくとイノシシの方から逃げていきました。野生動物は人間を見つけると逃げるのが本来の姿なので、この条例や捕獲の効果のあらわれではないかと思われます。しかし、現在でも六甲山ではイノシシの痕跡が非常に多くみられるので、観光や登山に行く方は気を付けていただきたいです。
六甲山に行って残念に思うのは、ゴミが捨てられていることです。そのゴミをイノシシは餌とします。ですから不法にゴミを捨てる行為も餌付けをしていることと同じになります。また、ゴミや残飯の放置はイノシシ以外の動物もおびき寄せることになります。その結果、山の中で人間の食べ物の味を覚えた動物が街に出没することになります。当たり前のことですがゴミや残飯は持ち帰りましょう。
本来イノシシは臆病で人を襲うことは少なく、人間に気がつけばイノシシの方から逃げていきます。しかし、餌付けなどにより人間が怖くなくなると餌欲しさに近づいてきてトラブルになります。また、冬の発情期の雄は興奮していることがあるので非常に危険です。他の哺乳類でも同じですが動物が突然人間に至近距離で出会うと逃げることができず襲ってくることがあります。春から夏にかけては、うり坊が現れることがあります。見た目が可愛いのですが、必ず近くに母親がいるので、近づくと子供を守ろうとして攻撃してくる場合があるので気を付けなければなりません。
イノシシは人馴れもしやすい動物です。このために餌付けが盛んにおこなわれたのだと思います。人馴れしやすいと書きましたが、ペットのように馴れるわけではありません。餌によって人間との距離を近づけているだけです。この限界距離を超えたときに野生動物は自分や子を守るために攻撃をしてきます。この距離は何メートルとか言えるものではなく、人間側の行動やイノシシの精神状態、興奮度などによって変化します。ですから、イノシシに出会わないように人間側が気を付けなければなりません。
私は40年前に神戸市で保護されて動物園に持ち込まれたうり坊を飼育したことがあります。赤ちゃんの頃から育てたので凄く馴れていましたが、成長した頃に突然鼻で押してきて噛もうとしたことがありました。飼育しているイノシシでもこのようなことが起こるので野生のイノシシには絶対に餌をあげたり近づいてはいけません。
このときは私の接し方が普段と違ったのかもしれません。そのためにイノシシを興奮させて攻撃を受けたのだと反省しました。
もしイノシシと出くわすことがあれば、イノシシを興奮させないように冷静になって、ゆっくりと後退し、その場を立ち去ってください。イノシシを見つけたからといって興味本位に車で追いかけるとイノシシはパニックになって歩行者を攻撃したりします。
また、大声をだしたり、棒をもったり、石を投げたりするのはイノシシを興奮させ当事者や近くにいる人を攻撃することにつながるので、イノシシを無視するぐらいの気持ちで立ち去るべきです。
街の環境を知らないイノシシは、街に出てしまうとパニックになって逃げ場を求め柵や建物や車に激突したり人を襲ったり攻撃的になるので注意が必要です。
人間もイノシシも不幸にならないように、イノシシに出会わないように気をつけることが大切です。 -
2023年11月21日
六甲山の自然 8 アサギマダラ
アサギマダラ Parantica sita
アサギマダラは秋になると北海道や本州から南西諸島や台湾に渡りをする蝶として有名です。春から夏にかけては反対のコースで北上個体が発見されているという報告があります。
六甲山では秋の渡りの季節に見ることができます。その年によって異なりますが9月下旬から10月中旬頃に飛来してきます。10月初旬、たくさんのアサギマダラが飛来することで有名な摩耶山天上寺へ行ってきました。運良く100匹以上のアサギマダラに出会うことができました。
ここにはコバノフジバカマが植えられていて、その蜜を吸いにアサギマダラがやってきます。
フジバカマなどの植物にはピロリジジンアルカロイド(pyrrolizidine alkaloid; PA)が含まれおり、この毒性成分を摂取することで捕食者から身を守っていると言われています。また、オスは性フェロモン分泌のためにピロリジジンアルカロイドの摂取が必要であると言われています。
コバノフジバカマの蜜を吸うアサギマダラ
アサギマダラの渡りに関してまだ充分に解明されていませんが、翅(はね)に採取日や採取場所、採取者の名前などをマーキングして、再捕獲する調査がおこなわれており、2000 ㎞以上移動した記録も報告されています。
翅(はね)のマーキング
成虫の翅(はね)の白っぽく見えるところは、浅葱色(あさぎいろ、薄い藍色)と言って、名前の由来ともなっています。この部分は半透明でうっすらと透けて見えます。
翅(はね)をとおしてして花が透けて見える
アサギマダラの雄の後翅(こうし)には黒褐色の斑紋(性標)があり、メスにはありません。これにより雄雌の区別ができます。
オスのアサギマダラ(赤丸:性票)
メスのアサギマダラ
摩耶山天上寺は花の綺麗なところで、季節によって桜やヤマボウシなどいろいろな花が咲いていて、それを求めて蝶たちも訪れます。こんなに美しいものを見せていただけることに感謝しつつ、自然と人間が共存できるようにお祈りさせていただきました。
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2023年11月16日
六甲山の自然 7 ハンミョウ、ニワハンミョウ
ハンミョウ(ナミハンミョウ)Cicindela japonica 本州,四国,九州,対馬,種子島,屋久島に分布
ニワハンミョウCicindela japana 北海道,本州,四国,九州に分布
ハンミョウ(ナミハンミョウ)は触角や脚まで全身が赤、青、緑に彩られた昆虫の中でもトップクラスに美しい生物です。
この綺麗な色彩は色素ではなく構造色と言って、特定の波長の光を反射させることで色をつけていると言われています。インコやクジャクの光輝いている羽や無色透明な液で作られたシャボン玉が綺麗な虹色に見えるのも構造色です.
ニワハンミョウの色彩は光沢がなく、茶色でわずかに緑がかっています。地面で動かずにいると足元にいても気付かないことがあります。翅には白い小さな斑紋があります
両種ともに平地や山地などの草の生えていない空き地や林道などの舗装されていない地面で春から秋にかけて見かけます。
大きな顎で昆虫を捕まえて食べます。
子供のころには、空き地や未舗装の道路でよく見かけました。そのような場所を歩いているとハンミョウが「ついておいで」と言わんばかりに、近づくと飛んで逃げて、私の進む方向に止まり、また近づくと、これを繰り返す行動が見られました。
これが面白くて、しばらくついて行ったことを懐かしく思い出しました。
このような行動をとるのでハンミョウは「みちしるべ」や「みちおしえ」と呼ばれたりします。昔は山に近い住宅街で普通に見られていたのですが最近ではほとんど見ることがなくなりました。
先日、六甲山高山植物園でたくさんのハンミョウが道案内をしてくれました。植物園などたくさんの花が咲いているところには、それを求めて虫たちが集まり、その結果、昆虫食であるハンミョウも集まってくるのだと思われます。
住宅街周辺でのハンミョウの減少は、開発による空き地や未舗装路の減少やそれに伴う餌資源である他の昆虫の減少などが原因ではないかと思われます。
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2023年09月20日
六甲山の自然 6 オオマリコケムシ(別名:クラゲコケムシ) Pectinatella magnifica
8月初旬に再度公園にある修法ヶ原池に行ってきました。
池の周りには立派な赤松が植えられており、ハイカーやバードウオッチング、家族やペットと一緒に散策される方がたくさん見られます。都会に近いにも関わらず静かな山の中でのんびり過ごすには絶好の場所です。ちなみにスマホもほとんど圏外でした。
修法ヶ原池に到着すると、池の周囲の浅瀬に見たこともない卵のような塊がたくさんありました。
一番大きなもので40cm×40cmぐらいありました。
1か月前に来た時には見られませんでした。帰ってから調べると、オオマリコケムシ(別名:クラゲコケムシ)と言う外肛動物に属している北米原産の外来生物でした。
1.5mmほどの個体が集まり寒天物質を出して、最大で1mぐらいの群体を形成すると言われています。兵庫県南部のため池でよく見られるそうです。
池や水路などで大発生して、取水口や水門が詰まるなどの報告があります。また、水質が悪化した水域で多く見られるそうです。
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2023年09月19日
六甲山の自然 5 アオゲラ
アオゲラ Picus awokera awokera
北海道を除く全国に分布
Cランク(神戸版レッドリスト2020)
Cランクとは、神戸市内において存続基盤が脆弱な種。極力、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
7月初旬、六甲山に車で向かいました。山の中の駐車場に車を停めて外に出るとキョッキョッと大きな声が聞こえてきました。声のするところに近づいても一向に鳴きやみません。鳴き声のする木の上の方をみると逃げることもなくアオゲラが鳴き続けていました。アオゲラは大型のキツツキの仲間です。アオゲラに出会ったのは初めてのことでした。ずっと見上げているとバードウォッチングをされている方が来られて、ここには巣があって、そろそろ雛が巣立ちすると親切に教えてくれました。アオゲラを警戒させてはいけないと何枚か写真をとってすぐに立ち去りました。
アオゲラのいたところは自動車道路から5mぐらいの比較的開けたところで、ハイカーもたくさん通るところなので、車や人への警戒心は少ないのかもしれません。
アオゲラは分布を拡大中で、山地部だけでなく住宅地へも分布が拡がっていると言われ、その要因は営巣に十分な太い木が住宅街にも増えていることや食物条件もよくなっていることなどが考えられると報告されています。平野部の多い明石市でも生息が確認されています。
キツツキ類は今まで小型のコゲラしか見たことがなかったので、アオゲラに出会えて嬉しい1日になりました。
今まで両生類や哺乳類の食痕調査をしてきたため、下ばかり見て歩いていたので、いろんな動物に出会っていても気が付かなかったのかもしれません。フィールドに出たら上も下も遠くも近くも見なければと思いました。
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2023年08月17日
六甲山の自然 4 ソウシチョウ
ソウシチョウ Leiothrix lutea
中国南部からヒマラヤにかけて分布。
神戸版ブラックリスト2020の外来生物種
神戸版ブラックリストとは、神戸市の生態系に悪影響を及ぼす又はそのおそれのある外来種(外国か他地域から持ち込まれた生き物)のリストのこと。
外来生物種とは、国外から侵入して生態系に著しい被害を与えている、又は与えるおそれのある動植物で、すでに駆除等の対策が講じられている、もしくは今後の実態把握に努めて対策を検討する必要がある種のこと
日本では江戸時代から輸入され飼い鳥として飼育されていたと言われています。野生化については家庭や業者から逃げ出したものや、放鳥が原因ではないかと言われており、日本における野生化については,1931年に神戸市の再度山で確認され、その後1980年頃から関東以南で生息が確認されていると報告されています。
ソウシチョウによる在来種への影響については、ウグイスの繁殖成功率が低下することが報告されています。
これはソウシチョウによる直接的な影響ではなく、繁殖環境が両種ともにササ類の繁茂する森林であることから、巣が高密度となり捕食者を繁殖場所に誘引するためではないかと報告されています。
六甲山では再度山や摩耶山、六甲山上の各所で観察しています。特に摩耶山では頻繁に観察されます。
摩耶山では在来種のシジュウカラやウグイスなども多く観察されますが、ソウシチョウはさらに多く見られ最優占種またはその可能性のある種になっているのではないかと思われます。
ソウシチョウの増加要因としては、繁殖期が4~10月と長いことや六甲山には繁殖に適したササ類の繁茂する森林が多くみられることが考えられます。
美しい鳥ですが、在来種を守るためにもソウシチョウの分布域を調べることも重要だと考えています。
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2023年08月08日
六甲山の自然 3 日中にモリアオガエルの産卵に出会った!
モリアオガエルの産卵は主に夜間に行われます。しかし、一人で夜の六甲山に行く勇気もなく、産卵シーンを見ることはあきらめていました。
7月初旬、この日は朝7時頃に繁殖地に着きました。繁殖シーズンも終わりをむかえ、どれくらいの産卵があったのか見られたらという程度の気持ちで池に向かいました。
そしたら、なんと運よく産卵シーンに出くわしたのでした。メス1匹に複数のオスが抱きついて産卵しているところでした。
しかも産卵が終わってオスたちが一斉に木に登って卵から遠ざかって行く瞬間も見られました。なかには木に登るのに失敗して池に落ちるオスもいました。
初めて産卵シーンを見たのと産卵が終わって我先にと急いで卵から離れるオスたちに感動しました。産卵中は捕食者に襲われやすいからなのかもしれません。
モリアオガエルの成体を捕食するのは爬虫類ではシマヘビやアオダイショウ、ヤマカガシなどで、哺乳類ではアライグマで報告されています。モリアオガエルの卵の捕食については「野生ニホンザルによるモリアオガエルの泡巣の捕食事例」という報告があります。
モリアオガエルが生息できる条件として、周りに森林があり池にはり出した木があること、餌としての昆虫類が豊富であることなどがあげられます。このようにモリアオガエルが生息している環境は生態系の多様性が保たれていると考えられます。
しかし、コイやウシガエルが生息している池ではモリアオガエルの産卵は確認できなかったという報告や、ウシガエルが定着した池で在来のモリアオガエルが見られなくなったという報告もあります。池や川に本来生息していない生物を放すことで簡単に生態系の多様性を崩してしまうことになるので注意しなければなりません。
オカトラノオの花が綺麗に咲いていました
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2023年07月03日
六甲山の自然 2 モリアオガエル
モリアオガエルRhacophorus arboreus
日本の固有種。本州のほぼ全域に分布。
Bランク(神戸版レッドリスト2020)
Bランクとは、神戸市内において絶滅の危機が増大している種など、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
モリアオガエルは地方によっては天然記念物に指定されています。六甲山系では、西宮市、芦屋市、神戸市で確認しています。繁殖期は池の周辺に生息するが、非繁殖期には池から離れた樹林内などに生息します。
雨の日に六甲山に登ると、近くに池もない稜線沿いの登山道で見つけたこともあります。
成体のサイズは、雄が約40-60mm、雌が約60-80mmと大きなカエルです。
六甲山では5月下旬から6月にかけて産卵が見られます。
池に張り出した木の枝先のほうに白い泡状の卵を産みます。
産卵は夜間に行われるため、昼間に姿を見られることは少ないです。
産卵から1~2週間ぐらいで、孵化したオタマジャクシは、池に落ちて育ちます。
6月に六甲山に行くとモリアオガエルが「コロコロ」と鳴いているので卵を見つけるのは比較的容易です。コンクリートで囲まれた人工の池でも卵をたくさん見つけています。「えっ、こんな池に」と思うところでも生息していることがあります。希少なカエルなので捕まえずに見守って下さいね。
モリアオガエルの繁殖時期には、いろんな種類のアジサイが咲いているので、梅雨の時期の楽しみでもあります。
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2023年06月13日
六甲山の自然 1 六甲山のカエル
王子動物園は六甲山の麓にあり、園内からも六甲山を眺めることができます。そんな六甲山にどんな自然や生き物たちがいるのか、不定期ですが「六甲山の自然」と題して、山を歩いて出会った生き物たちを紹介していこうと思います。環境保全の観点から詳細な場所は明記しない場合があります。
今回は、4月中旬から5月中旬に見られたカエルについてお話します
ニホンヒキガエルBufo japonicus japonicus
本州の近畿以西、四国、九州などに分布
Cランク(神戸版レッドリスト2020)
Cランクとは、神戸市内において存続基盤が脆弱な種。極力、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
六甲山のとある池の周囲の浅瀬が黒いものに囲まれていました
黒い塊が小さく動いているので、ハイカーから「なにこれ?」って声が聞こえました。密集しているのでオタマジャクシに見えなかったようです。
さらに近寄り、よく見ると小さなオタマジャクシであることがわかります
1か月後に同じ池に訪れると、オタマジャクシはいなくなり、小さな幼体が池の周りの陸地で見つかりました。
このように、春になると六甲山のいくつもの池でヒキガエルのオタマジャクシを見ることができます。池の外周が真っ黒になるくらいに見られます。このオタマジャクシから大人のヒキガエルになれるのは1万匹に1匹ぐらいと言われているので、もし見つけても捕まえずに見守ってあげてくださいね。
タゴガエル Rana tagoi tagoi
本州、四国、九州に分布
Cランク(神戸版レッドリスト2020)
Cランクとは、神戸市内において存続基盤が脆弱な種。極力、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
和名と学名は採取者である両生類学者の田子勝弥氏の名前がつけられています。
水の少ない細い川沿いの登山道でタゴガエルに出会いました。
赤茶色の綺麗なカエルです。
六甲山では5月頃が繁殖期となります。川沿いを歩いているとあちらこちらから鳴き声が聞こえてきます。産卵場所は川沿いの岩の隙間や、土にできた穴の中などです。鳴き声は聞こえても姿を見られることは少ないカエルです。
タゴガエルの生息環境
鳴き声が聞こえた土の壁に開いた穴。このようなところや岩の隙間などで産卵します。
雨で穴から流れ出た卵
産卵は30~160個の卵を産むと言われています。孵化したオタマジャクシは、餌を食べずに卵黄の栄養だけで成長してカエルになると言われています。
今度、六甲山に行ったときには、この卵から成長したカエルに出会えたらいいなと思っています。
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