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  • 2023年11月29日

    動物専門員の日常 ♯04 “番外編 世界アリクイの日~World Anteater Day~”

    こんにちは。11月29日は“いい肉の日”や“いい服の日”など記念日満載な日ですが、

    実は“世界アリクイの日~World Anteater Day~”でもあります。“アリクイを取り巻く環境の現状を広く知っていただき、保全へと繋げたい”そんな願いを込めて、王子動物園で飼育しているオオアリクイを詳しく紹介したいと思います。

    世界アリクイの日

     

    いきなりですが、オオアリクイの担当になって、私が最も聞かれる質問って何だと思いますか?答えは、「何食べているの?やっぱり蟻を食べているの?」です。
    この質問、とっても多いです。みなさんのご想像の通り、野生下ではアリやシロアリを食べて生活をしています。60㎝にも達する舌を1分間に160回以上も出し入れして、1日約30,000~35,000匹を舐めとって食べると言われています。アリの巣を見つけるための発達した嗅覚は、なんと人間の約40倍と言われており、寝ている時間以外の活動時間のほとんどを採食に費やしています。ちなみに歯は持っておらず、ネバネバした舌には絡めとったアリを逃さないように後ろ向きの小さなトゲがついています。また大変強い前肢をもっており、前肢の第2・3指(人差し指と中指)に発達した鋭い爪を持ちます。この爪を使って蟻塚を崩したり、木の皮をめくったりします。アリやシロアリを食べるために特化した身体の作りになっている訳ですね。

     

     

    IMG_8690

     

    飼育下では、さすがに蟻を毎日、準備することができないので代用食として王子動物園では鶏ミンチ肉、食虫目ペレット、ヨーグルト、卵、粉ミルクをお湯でドロドロに溶かしたものを与えています。現在、オスのブンバ(静岡市立日本平動物園生まれ)とメスのサニー(名古屋市立東山動植物園生まれ)の2頭を飼育していますが、2020年5月に王子動物園へと来園した際は餌の調整(量や配分)が難しかったようです。

     

    IMG_9890

     

    「最初は、餌食いが悪くてかなり苦労したよ~」と先輩に言われていたのですが、今では2頭とも1日2回もりもり食べてくれています。ちなみに、オスのブンバはなぜか寝ながら食べるスタイルです。私は初めて見たときに驚きました(笑)

     

    そんなオスのブンバとメスのサニーですが、ペアリング計画が進行中です。オオアリクイ属は交尾以外、単独で生活する社会性を持たない動物です。慣れない個体同士が接触すると威嚇行動に出る場合もあり、まずはお互いが慣れることが必要でこれまでタイミングを見ながら同居を進めていました。今はまだ2頭の間には絶妙な距離間があり、ペアリング成功への道のりはまだまだ先のような気がします。じっくりと見守っていただけると嬉しいです。

     

    最後に王子動物園がどうやって種の保存の一助になっているのかを紹介したいと思います。
    種の保存というと、サニーとブンバのペアリング計画のように、“絶滅危惧種の繁殖”をイメージされる方も多いのではないでしょうか?もちろん、それも正しいことではありますがそれだけではありません。動物の展示を通じて、オオアリクイのこと自体とそして、その動物が置かれている環境を知ってもらうことも、とても大切です。

    そもそも、その動物自体を知らないと
    何を助けなければならないのか、なぜ助けなければならないのか、分からないと思うのです。

     

    オオアリクイは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅のおそれのある野生動物のリスト、通称レッドリストにおいて絶滅危惧種(VU:危急)に分類されています。森林伐採や農地転用、高速道路の建設と言った生息地の分断化や縮小、スポーツハントによる乱獲、ペットなどの商用目的の密猟が原因で野生下では絶滅に近いと言われている動物でもあります。国内では現在、6園館17個体(2022年12月末地点)が飼育されており、それぞれの園館でペアリング計画が進行しております。ちなみに近畿地方でご覧いただけるのは、王子動物園だけとなります。

     

    意外にオオアリクイが絶滅危惧種であることや国内での飼育頭数が17個体であり、ペアリング計画が進行していることなど知られていないと感じることが多いです。

    「何食べているの?やっぱり蟻を食べているの?」

     

    私はこの質問を頂く度に、オオアリクイのことをどこまで知っていただけるだろう。
    野生下の環境の事もどこまで興味を持っていただけるだろうか。とワクワクします。
    動物の飼育展示を通じて来園者の方にその動物に興味を持って頂くことが
    種の保存への第一歩だと思っています。

     

     

    本日、11/29は“世界アリクイの日” \(^▽^*)当園のブンバとサニーを通じて、野生下のオオアリクイの現状にも興味を持っていただけると嬉しいです。

    動物専門員 あお